二十二帖 玉鬘
光源氏.太政大臣 35歳4~10月
紫の上 27歳
玉鬘 21歳 六条院 『夏の御殿』
紫の上が身に着けた十二単装束
葡萄染色と今様色で紫の上の高貴な位がわかる
六条院の春
2017年1月
『東京国際フォーラム』の
ロビーに平安王朝の雅な世界が
六条院の「様子模型」で具現されたそうです。
模型は、京都市の『風俗博物館』の提供だと思います。
「幼いころから苦労つづきだったのですね。
もう、大丈夫。
この邸で、のんびりとお暮らしなさい」
玉鬘は*正妻腹ではないが、源氏の少年期からのライバルである内大臣(頭中将)の血を引いている。
これから六条院で暮らしていくうちに、ほどなく都でも十分貴婦人として通用するようになると源氏はみた。
その旨を右近に言い聞かせて、紫の上の待つ【春の御殿】に戻っていった。
【春の御殿】に戻った源氏はさっそく紫の上に、
「田舎暮らしがあまりにも長いので、顔を見るまでは玉鬘という娘を少々見くびっていました。
ところが、会ってみると思っていたのとはまるで違う。
私のほうが恥ずかしくなるほどの淑女に成長していました。
明日にでも、年頃の佳人がいることを世間に知らせて、兵部卿宮など邸に出入りする若い連中の好き心にさざ波を立たせるつもりです。
彼らがくるたびに真面目くさった辛気臭い表情をしているのは、若い魅力的な女君がいなかったからです。
これから、ずいぶん様子が変わると思いますよ」
紫の上、
「困った父親ですこと。
何より先に、男君たちの心ををそそるようなことを思いつかれるとは。
わたしは、あまり感心しません」
源氏は硯を手元に引き寄せた。
〇 恋ひわたる 身はそれなれど *玉かづら
いかなる筋を 尋ね来つらむ
夕顔をずっと恋いつづけている私はたしかに昔のままだが、
玉鬘はどのような縁(筋)でここを訪ねて来たのであろうか
和歌を詠みながら源氏がつぶやくのを耳にした紫の上は、
「なるほど、光君が深く愛された方の忘れ形見なのであろう」
正妻格としては、素直なものである。
源氏、長男の夕霧に
「20年ほど行方不明だったお前の姉が、やっと見つかった。
やはり、花散里に預けるので仲良くしてほしい」
*正妻腹
正妻(本妻)の子供
*玉かづら
『帖名』にもなっている「人名」、玉鬘はこの和歌に由来する
玉鬘
品があり好感をもてる玉鬘を見て、源氏は
気立ての優しい花散里と暮らすのがいいと思う。
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