53玉鬘 捌
源氏物語名場面㊾ 玉鬘 捌 🔲 四人は【鏡神社】前の海辺でちっぽけな舟に乗り京へと漕ぎ出した。 ただ一人だけ見送りに来た長女のおもとは舟影が見えなくなるまで千切れんばかりに手を振っている。 ■ 「我々の肥前国脱出に大夫監が気がつけば直ちに追っ手を差し向けるだろう」 そう予想していた豊後介は予め特別仕立ての「早舟」を用意しておいた。...
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源氏物語名場面53 玉鬘 玖 響ひびきなだ灘 🔲 「*河尻が見えたぞ~」 *川尻 淀川の河口 舟子たちが歓声を上げている。 逃避行が成就して気持ちに余裕ができたからか豊後介と兵部の君は肥前国に残してきた家族に思いを馳せている。 ■ 豊後介「妻子のことをすっかり忘れていた。姫君の姿が見えないので今頃大夫監が怒って妻子に当っていないか心配だ」今さら後悔臍を噛んでいる。...
View Article55玉鬘 拾
源氏物語名場面55 玉鬘 拾 平安京南端の九条大路通りに沿って東寺や東福寺、羅城門跡や西寺跡がある。 🔲 都の外れの貧しい界隈で、卑しい市女や商人などが住んでいる。 玉鬘一行は一旦《九条》に腰を据えたが、何をすることもなく秋風が吹き始めた。 唯一の男であり乳母が頼りにしている豊後介はまるで陸に上がった河童のようだ。 表情に生気がなく、日がな一日ボンヤリしている。...
View Article56玉鬘 拾壱
源氏物語名場面56 玉鬘 拾壱 石清水八幡宮/男山八幡宮 「仁和寺にある法師、年寄るまで、石淸水を拝まざりければ、心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、たゞ一人、徒歩よりまうでけり。― ― ―何事にも、先達はあらまほしき事なり」 吉田兼好『徒然草』 ◆ 石清水八幡宮 平安時代前期に八幡宮総本社の【宇佐神宮】(大分・宇佐市)から勧請された神社。京都盆地南西の男山(鳩ヶ峰 標高143m)山上に鎮座。...
View Article57玉鬘 壱弐
源氏物語名場面57 玉鬘 壱弐 玉鬘一行玉鬘 乳母 豊後介 兵部の君 家来☆都の最南端《九条》から初瀬の【長谷寺】へ。途中椿市の宿で故夕顔の侍女だった右近と遭遇する。 🔲 玉鬘は乳母や豊後介たちに励まされ美しい顔に汗水を垂らしながら足を運ぶ。 《九条》を発って4日目の午前10時ごろ一行は*椿市という長谷寺参詣の入口の町に到着した。☆...
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源氏物語名場面58 玉鬘 壱参 折おしき敷狭い薄板を折り四囲の縁にした角盆足つきの折敷もある 神事や食事に使う 🔲 日暮れ方屏風の向こう側に予約客が大勢でだが足音を忍ばせてやって来た。 見るからに身分の高そうな女君ふたりに数多の男女が従っている。 屏風の両側とも大声を出したり余計な物音を立てたりしないように気を遣っていた。 ■ 豊後介が夕食を《折敷》に載せて運んできた。...
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源氏物語名場面59 玉鬘 壱肆 長谷寺本尊十一面観世音菩薩立像 右手に錫杖 左手に水瓶方形の大磐石という台座に立つ。開山徳道上人が造立して以来、度重なる火災により再造を繰り返してきた。 🔲 しかし、誰か、どうしても思い出せない。 ずいぶん若いときに会っているはずだが遠い記憶と違って目の前の男は浅黒く太っている。 身なりも、粗末だ。 ■ その男が、女の名前を呼んだ。 「三条、母上がお呼びです」...
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源氏物語名場面 玉鬘 壱伍 長谷寺本堂遠望『真言宗豊山ぶさん派』総本山西国三十三所第8番札所奈良県桜井市初瀬 大和と伊勢を結ぶ『初瀬街道』を見下ろす初瀬山の中腹に【本堂】が建っている。◆石山寺と長谷寺道綱の母『蜻蛉日記』清少納言『枕草子』 紫式部『源氏物語』菅原孝標女『更級日記』などの女流古典文学作品に登場する。 🔲...
View Article61玉鬘 壱陸
源氏物語名場面61 玉鬘 壱陸 灯とうみょう明神仏に供える火ほかに、法灯・神灯・篝火・灯火 🔲 乳母の驚くまいことか。 「屏風の向こうに右近さまが!?奇遇としか―、それもこれも《観音様》のお導きです」 双方を隔てていた屏風を取り払うと乳母と右近は互いに駆け寄ってひしと抱き合った。 夕顔を想う者同士の20年余の時の流れを経た邂逅である。 乳母/故夕顔の乳母右近/故夕顔の侍女 ■...
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源氏物語名場面62 玉鬘 壱漆 大和龍祥霊場龍玉切絵御朱印 源氏物語切絵御朱印☆新年を迎えるにあたって新しい二種類の切絵御朱印をご用意いたしました。どちらも令和六年にゆかりのあるデザインとなっておりますので、お参りの際にお手に取っていただければ幸いでございます。 大和国長谷寺 🔲 豊後介「早く、(長谷寺に)参りましょう」 右近が同調して、「ご一緒に参りませんか」...
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