二十二帖 玉鬘
光源氏.太政大臣 35歳4月~10月
玉鬘 21歳 京・九条
映画『新源氏物語』
紫の上/若尾文子 光源氏/市川雷蔵
光源氏 紫の上 内大臣(頭中将) 玉鬘 夕顔
右近は夕顔の侍女。夕顔の死後、光源氏→紫の上に仕えた
「若い女房は気乗りがしないようなので、どうも頼みにくいのだ。
やはり、お互い年配者同士に限る」
控えている女房たちが、顔を見合わせてくすくす笑っている。
「そんなこと、ありませんのにねえ。
源氏の君のお側近くでお仕えすることを誰が嫌がるものですか」
「本当に、そうですわ。
返事に窮するようなご冗談ばっかりおっしゃるから困るのですよね」
『太政大臣』はいわば名誉職で、宮中に出仕して政務に追われるようなことはない。
政務については、いっさい『内大臣』(頭中将)に任せている。
源氏は毎日が日曜日なので、女房たちに他愛もない冗談をいって面白がっているのだ。
女房たちが退室して、源氏と紫の上と右近の三人になった。
源氏が右近に
「さっき懐かしい方と巡り合ったといっていたが、だれなの。
尊い修行者とでも仲良くなったのか」
「まあ、人聞きの悪いことを。
亡くなられた夕顔さまにご縁のあるお方です」
「ほんとうか、それは良かった。
玉鬘は長いあいだ、いったいどこで暮らしていたのか」
「辺鄙な草深い山里で暮らしておられたようです。
かつての女房たちが、幾人かは変わらずにお仕えしておりました。
ずっと不自由なお暮らしだったようで、乳母さまから暮らしぶりを聞いているうちにたまらなく切なくなりました」
「母親の夕顔と比べて、玉鬘の容姿はどうか」
「母君よりもずっと美しく成人しておられます」
「それは、心惹かれるね。誰くらいの器量だろう」
源氏、紫の上に視線を移して
「この方くらいかな」
右近、さすがに恐縮して
「まさか、及びもつきません」
この辺りの源氏の発言はことごとく、
今なら「セクハラだ!!」と炎上しそうです。
ただ女性である作者の紫式部は
つゆほどの違和感なく書いているので
当時は普通に行われたやり取りなのでしょう。
源氏、
「まあ、とにかく玉鬘をこの六条院に迎えよう。
実父の右大臣に知らせる必要はあるまい。
あちらには大勢の子供たちがいるので、いま仲間入りしたところで、かえってつらい思いをするだろう。
わたしには子どもが少ないので、思いがけず実の子が現れたとでも言っておこう。
美貌の玉鬘をめぐって、若い連中が恋のさや当てをするように仕向けるつもりだ」
右近、
「源氏の君のお心のままにしてくださいませ。
内大臣にお知らせするとしても、殿のほかのどなたがお耳に入れることができましょう。
お亡くなりになった夕顔さまの代わりに、玉鬘さまを大切になさることがきっと罪滅ぼしになりましょう」
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山高きが故に貴からず
風景荘厳ゆえに貴からず
ひそやかに心に沁みる風光もある





