第十九帖 『薄雲』
光源氏内大臣時代 31歳冬~32歳秋
司召の除目つかさめしのじもく
在京の官吏を任命する儀式。 風俗博物館・京都市
地方の役人を任命する儀式は、県召あがためし
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四十九日の法要が済んだころ、母后のころから仕えていた信頼の篤い比叡の僧都が、人目のない頃合いを見計らって、冷泉帝に、亡き藤壺尼宮が生涯をかけて守ってきた『出生の秘密』を打ち明けた。
『出生の秘密』を隠したままでは、ますます天変地異が頻発し世の中が乱れると心配してのことである。
自らが亡き桐壷院の皇子ではなく源氏の子であることを知った帝は、昨今の、太政大臣につづく尼宮の死や頻発す