第十九帖 『薄雲』
光源氏内大臣時代 31歳冬~32歳秋
光源氏 女院/藤壺尼宮 冷泉帝
桐壺院 葵の上 太政大臣 権中納言/頭中将
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
政治向きのことは太政大臣に頼りきりであった源氏は、死別の悲しみのほかに、内大臣としての責任が重くなることを痛感していた。
その年は世の中が騒然として、不可思議な現象が次々に起きた。
天空では、太陽や月や星がそろって異様な光りを帯び、
不気味な色と形状をした雲がすごい勢いで八方に飛んでいる。
世間の人々はただならぬ天変地異の頻発ににひどく驚き慌て
ふためいているが、源氏だけは異変の理由を察していた。
藤壺尼宮は、春の初めころからずっと病に伏せていた。
三月にはいると、にわかに重篤になったので
聞きつけた冷泉帝が押っ取り刀でお見舞いに来た。
帝はかつて父の桐壺院と死別したときはまだ幼くて、死の
意味がよく分からなかったが、今はたいそう嘆き悲しんでいる。
悲嘆にくれている息子の様子を目の当たりにして、
尼宮はつらいのだろう、左右の目から涙があふれている。
たいそう弱々しい声で、
「そのうちに参内して、ゆっくり昔話でもと思っておりましたが、
ずっと気分がすぐれず、とうとう伺うことが叶いませんでした」
尼宮37歳、厄年である。
藤壺尼宮は目を閉じたまま、来し方を振り返っていた。
「わたしは最高の身分の家柄に生まれて、何一つ不自由する
ことのない、誰よりも恵まれた幸せな日々を送ってきた。
帝の寵愛を受け、わが子は帝位に即くことができた。
しかし心の中には絶えず寂しい風が吹いていた。
あの夜のことが、すべての始まりだった。
想う人と結ばれることはないが、けっして互いの気持ちを世間に
悟られないよう懸命に努めてきた悲しい一生でもあった。
帝には秘密にしたまま、この罪を抱えて死んでゆく」
源氏は思いよらなかった藤壺尼宮の急な重篤の知らせに
驚いて、取るものも取り敢えず見舞いに訪れた。
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来る10月22日の『衆議院議員選挙』は、陰りが見えているとはいえ
老舗の「安倍晋三個人商店」と、今まさに飛ぶ鳥落とす勢いの
「小池百合子個人商店」の対決の様相を呈している。
小池氏の、「民進党議員のうち、憲法と安全保障に関して考え方
の違う議員は排除する」という発言には意味するところは
理解できるが、その言葉遣いの冷酷さに驚いた。
根本のところで、「人」を大事に思っていない。
民進党の議員全員を『希望の党』に合流させようと思って交渉
したであろう前原誠司代表は甘いし、そういう感覚だから、
民進党は絶えず分裂を繰り返して今に至ったのだろう。
藁をもつかむ思いなのだろうが、思想信条の異なる政党に入党しようとする議員も情けない。その点、早い段階で、「希望の党にはいかず、無所属で出馬する」と明言した