第十九帖 『薄雲』
光源氏内大臣時代 31歳冬~32歳秋
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太政官制
トップの「太政大臣」と「内大臣」は常設ではない。
「内大臣」は、「右大臣」の次。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
【大堰の館】では、明石の君が娘を手放したことを今さら
ながらに悔やみ、身分の低いわが身の不幸を嘆いていた。
母親の尼君も、娘が思い悩んでいるとき、
「姫君の将来のために、源氏の君と紫の上にお預けなさい」
諭したのだが、あのとき以来ずいぶん涙もろくなっている。
しかし、二人とも、姫君が紫の上にたいへん可愛がられて
いるという噂を耳にした時にはうれしさが込み上げた。
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「【大堰の館】に足を運ぶ回数が減れば、明石の君は、
『やはり、姫君が居ないからだわ』と嘆くであろう」
源氏は師走の半ば、雪の降りしきる中を秘かに出かけた。
「こんなに可愛らしい女の子を母親から譲り受けたのだわ」
そのことに思い当った紫の上は、
寂しい日々を送っているに違いない明石の君を思いやって、
源氏が大堰に通うことをすこし大目に見るようになった。
「私も、こんなにかわいい娘に会えなくなれば辛いですもの」
姫君を懐に抱き上げて、出るはずのない乳首を含ませてみた。
見ている女房たちは切なさに胸がつまった。
「どうして、こちらにはお生まれにならなかったのかしら」
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そのころ、太政大臣(頭中将や葵の上の父)が逝去した。
国家の柱石であった人物を失って、冷泉帝はひどく落胆した。
政治向きのことは義父の太政大臣に頼り切っていた源氏は、悲しみのほかに、『内大臣』としての責任が