宮殿や寺社で用いる簾 すだれ
雪あかりの中ではじめて末摘花の顔をみて、あまりの醜女ぶりに仰天する光源氏。
源氏は須磨へ落ちるとき末摘花には挨拶をせず、帰京してからも久しく連絡しなかった。
それでも、末摘花は源氏の来訪をひたすら待ち続ける。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
昔もたびたびそうであったように、返事がない。
しばらくしてやっと、か細い声が聞こえた。
末摘花にしても、源氏が廃墟のような邸に足を運んでくれたことをありがたいと思ってはいるが、ちょっと拗ねてみせる。
〇 年を経て 待つしるしなき わが宿を
花のたよりに 過ぎぬばかりか
長年まっても甲斐のなかったわたしの宿を、源氏の君はただ藤の花を愛でるついでにお立ち寄りになられたのですね。
御簾の向こうでわずかに身じろぎした気配とともに、袖の香りがほのかに漂ってきた。
ひたすら待ち続けていた末摘花の素直で゛一途な心根に感銘を受けた源氏は、増・改築中の二条院に引き取ろうと心に決める。
その前に、何人もの大工や庭師を遣わして常陸宮邸の手入れをさせたり調度など身の回りの品々を贈ったりした。
それから、多くの若い者たちが去っていったあと、今なお仕えている家司や女房たちに十分な手当を与えた。
源氏の手によってみごとに常陸宮邸がよみがえると、人の心なんて現金なもの。
末摘花を見限って、羽振りのいい受領の家などに仕えるため去っていった女房たちが次々に戻ってきた。
邸に賑わいが戻っておよそ2年後、末摘花は二条院の【東の院】へ引っ越した。
東の院は二条院と同じ敷地内ゆえに源氏との日常的な接点があり、ひどく不器用で内気すぎる末摘花にやっと春が訪れた。
夫の太宰大弐が任期を終えて筑紫の大宰府からから戻ってきた叔母は姪の幸運を激しく嫉妬し、侍従は末摘花の幸せを心から祝福する。
紫式部にしては「一件落着」といったふうの平凡な結末だが、不思議に思うことがある。
第6条『末摘花』において、作者は「これでもか!」というほどに常陸宮家の姫宮である末摘花の醜悪な容貌をあざ笑ったが、
この第15帖『蓬生』においては一転、容姿にはまったく触れず、ひどく内気だが高潔な人柄をひたすら称揚している。
その間に、紫式部に何があったのか。
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『安倍三代』における祖父は、「昭和の妖怪」の異名をとる母方の岸信介元首相でなく、父方の祖父・安倍寛衆院議員。 岸氏は「A級戦犯」、安倍寛氏は「反戦」を掲げて立候補した。