蓬 よもぎ 惟光がまず邸の中に入って荒涼とした庭一面に生えている雑草をかき分けながら進んでいると、どこからか老女房の咳払いが聞こえた。
寝殿造り平面図
平安中期に成立した貴族の住宅形式。中央に寝殿をおいた。
常陸宮邸は建物、庭ともに荒れ果てている。
藤まつり 亀戸天神社
本社に当たる『太宰府天満宮』に対して、東の宰府だから『東宰府天満宮』ともいう。東京・江東区亀戸
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
源氏がむかしの忍び歩きのあれやこれやを懐かしく思い出しながら花散里のもとへゆっくり牛車を進めていると、鬱蒼とした森のような一角が目に入ってきた。
雑然と林立した樹木や伸びきった蓬などの雑草のあいだから、見覚えのある廃墟のような荒れ果てた邸が見えた。
崩れかけている築地塀の向こうの大きな松の枝に藤が咲きかかって、月の光になまめかしく揺れている。
源氏、
「ここは、常陸宮邸であったな」
「さようでございます」
「姫宮(末摘花)は、お元気であろうか。いい機会だからお訪ねしよう」
「どちら様でしょうか」
「惟光と申します。侍従の君とお会いしたいのですが」
「侍従は、遠いところへ行ってしまいました」
しゃがれているが、聞き覚えがある。
侍従の叔母の声に違いない。
「姫宮はお元気でしょうか。
源氏の君が、近くまでお越しになっておられます」
老女房の顔が、ばっと輝いた。
「むかしと変わらず、ひっそりとお暮らしです」
惟光が戻ってきた。
「遅かったな。どういう様子であった?
お庭がますます雑草どもに覆われているようだが--」
「侍従の叔母の少将という老女房と会いましたが、姫宮は変わりなくお暮らしだそうです」
「こんなに蓬の生い茂った邸で、姫宮はどんな気持ちでお過ごしになっておられるのやら。
もっと早く、お訪ねするべきであった」
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文書を保護者に配布したとして行政指導を検討し