女房装束 。 瀬戸内寂聴 源氏物語の男君たち [2巻セットDVD]/アネック
十二単(じゅうにひとえ)とも。
平安時代、朝廷の後宮に仕える女房の服装。
国宝「源氏物語絵巻」復元模写 『徳川美術館』所蔵 名古屋市
公家の平常服
立烏帽子(たてえぼし)
・頭部の峰を高く立てたままにして折り曲げない
烏帽子(烏色のかぶりもの)。
檜扇(ひおうぎ) ヒノキの薄板20〜30枚をつづり合わせた板扇
直衣(のうし) 皇族や公卿(上流貴族)の平常服
指貫(さしぬき) 裾を締め括れるように紐を通した袴
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源氏はさっそく、東の院の修理と増築を急がせた。
「明石のような鄙びた土地には、まともな乳母はいないであろう」
・乳母(めのと) 実母のかわりに乳児に授乳し養育する女性。乳母の子は乳兄弟(めのとご)とよばれて好遇された
源氏はすぐに、将来の「后」の乳母にふさわしい人物をさがした。
ほどなく、故桐壺院に仕えていた宣旨の娘が結婚に失敗して、女手一つで幼い子供を育てながら不如意な生活を送っていることが分かった。
源氏は故院存命のころに何度か会ったことがあるが、家柄も人品骨柄も問題ない。
亡き父も信頼していた。
自ら出向いて、明石に赴いてほしいと頼んだ。
宣旨の娘は辺鄙な土地へ赴くことにいささか不安を感じたようだが、「源氏の君のためでしたら」と快く引き受けてくれた。
摂津の国までは舟で、それから先は馬を走らせた。
宣旨の娘が明石につくと、明石の入道は顔をくしゃくしゃにして喜び、明石の君は満面の笑みでむかえた。
二人とも、このまま源氏から何の連絡もないかも知れないと不安に駆られはじめた矢先だったのである。
とにかく、ひと安心。
明石の君に届けられた山のような荷物の中に、赤ん坊を気遣う手紙が入っていた。
〇 いつしかも 袖うちかけむ をとめ子が
世を経て撫づる 岩の生ひ先
姫君をはやく手元にひきとって私の袖で撫でてあげたい。天女が長い年月、天の羽衣で産まれたての岩を撫でるように
入道はよろこんだり恐縮したり感謝したり、やたらと忙しい。
しまいには、都の方角を向いて手を合わせていた。
明石の君は返歌を詠んだ。
〇 ひとりして 撫づるは 袖のほどなきに
覆ふばかりの 蔭をしぞ待つ
天女の袖ならぬわたし一人の袖はあまりにも小さく姫君のお世話が行き届きません。大きな袖で撫で育んでください
赤ん坊は、不吉なまでに可愛らしい。
宣旨の娘は、都から遠くはなれた海辺の寒村にやってきた寂しさを忘れたかのように、源氏の娘の世話に心をくだいた。
。
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それは時代が病んでいるからで、多くの人が「自分は死者のように生きている」という鬱屈した思いをこころの奥深くに持っているからではないだろうか。 (中略)
生きるうえでいちばん大切なものはなにかを求め、自分のなかの死滅していたものをよみがえ
らせようとしている 。(『四国遍路』から抜粋)
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澪標⑥をとめ子
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