古来、風光明媚な「歌枕(うたまくら)」として名高い。
歌枕--和歌の中に、多く詠みこまれた名所。
法華八講 風俗博物館
法華八講 -- 『法華経』八巻を八座に分け,朝夕一座ずつ四日間で講ずる法会。
両親や祖先を供養する目的で行われる。
普賢菩薩像 風俗博物館
法華八講の本尊は、普賢(ふげん)菩薩。
澪標(みおつくし)
澪標 船が往来するときの標識。
○ みをつくし 恋ふるしるしに ここまでも
めぐり逢ひける えには深しな 光源氏
○ かずならで なにはのことも かひなきに
などみをつくし 思ひそめけむ 明石の君
帖名『澪標』は、これらの和歌による。
和歌では、「身を尽くし」にかけて用いることが多い。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
源氏は、明石から都まで送って来てくれた者たちが帰るとき、明石の君への手紙をことづけた。
紫の上に気づかれないように気を配りながら、情愛こまやかに書いたようである。
「浜辺に寄せる波の音が寂しく聞こえてくる夜は、いかがお過ごしでしょうか。
〇 嘆きつつ 明石の浦に
朝霧の立つやと 人を思ひやるかな」
あなたが嘆きながら夜を明かす明石の浦には、あなたのため息が朝霧のように立ちこめているのではないかと思いやっております」
須磨にいたとき、ひっきりなしの稲光と耳をつんざく雷鳴とともに激しい嵐が吹き荒れて高潮が寓居のすぐ下まで襲ってきたことがある。
そのとき、桐壺院が源氏を助けるためにびしょ濡れの姿で夢枕に立った。
その姿を見て、父が極楽往生できず悪道をさまよいながら苦しんでいることを知り、ずっと心にかけていた。
「父上の罪障を取り除いて、お救いしたい」
今の源氏には、それができる。
神無月(旧暦十月)に、桐壺院を追善供養するため法華八講を催した。
・ 追善供養---死者の冥福を祈って行う供養
都中のすぐれた僧侶たちを招いて、盛大に執り行った。
弘徽殿太后は、「とうとう源氏の君を宮廷から追放することができなかった」と歯ぎしりしたが、
朱雀帝は、「光をよろしく頼む」との故桐壺院の遺言をやっと実現できたことで肩の荷を下ろしていた。
気持ちが軽くなり、眼病も快方に向かった。
しかし、もともと身体が弱く、長生きできそうもないという自覚がある。
近く譲位したいが、愛しい朧月夜のことが気がかりだ。
・ 当時、帝には「生前譲位(退位)の自由」があった
帝は涙ながらに朧月夜に話しはじめた。
「父・太政大臣が亡くなり母・大宮も病を得ておられる上に、わたしの寿命も長くないので、あなたの行末がとても心配です。
以前からあなたは光君に夢中でしたが、わたしの愛情はほかの誰よりも深いものです。
どうか、あなたのことだけを思い続けてきたことを忘れないでください」
・ 私たちには想像しにくいが、朱雀帝と朧月夜は甥と叔母の関係
うつむいている朧月夜の頬から、きれいな涙の粒がとめどもなくこぼれ落ちている。
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今上天皇には「生前退位の自由」どころか「基本的人権」すらないようなものだ。敗戦後、『人間宣言』をした「天皇」は、法的に「国民」なのだろうか。
「国民統合の象徴」は「国民」ではないよう
な気がする。ご存知の方、教えてください