瓶子(へいし へいじ 平氏)
貴族たちは、舞いを舞っている忠盛に対して、
「伊勢へいじは すがめなりけり」と囃し立てるが、
なぜ、そのことが忠盛を侮辱することになるのか。
頭の体操のようだが、表の意味はこうだ。
伊勢地方では当時、酢を入れる粗末な瓶子(へいし:酒器=徳利)が生産されていて、伊勢の酢甕(すがめ)は有名だった。
すなはち、伊勢地方では、徳利に酢を入れていた。
この意味で、「伊勢へいじは ~」に漢字をあてると
「伊勢瓶子は 酢甕なりけり」となり、「伊勢産の徳利は、酢甕である」という単なる事実をいっているに過ぎない。
よって、忠盛を侮辱していることにはならない。
だが、裏の意味があった。
平成の我々には予備知識を要しないので、裏の意味のほうが分かりやすい。
伊勢へいじとは、言うまでもなく忠盛のこと。
すがめは、やぶにらみ。
漢字を当てると、「伊勢平氏は すがめ(やぶにらみ)なりけり」となる。
平家年来の宿願がかなって忠盛が初昇殿したハレの日、しかも上皇の前で舞いを舞っている最中である。
貴族らは卑怯にも、「平忠盛はやぶにらみ。平忠盛はやぶにらみ」と囃し立てて、からかい辱めたのだ。
当時の貴族たちの性根が、どれほど腐り切っていたことか。
同時に、忠盛の器量の見せ所でもあった。
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