平家貞 菊池容斎(江戸時代)
内裏の小庭には、貴族らが忠盛を闇討ちする計画を伝え聞いた郎等(ろうどう:家臣)の平家貞が、腹巻姿(下図。現在の腹巻を想像しないで下さい)の武装で、大だんびら(幅の広い刀)を脇に差したまま、畏まって控えていた。
家貞はもともと平家の一族だが、今は郎等として仕えている。
勝手に庭に入り込んでいる家貞に気づいた内裏の役人たちが、「狼藉者、さがれ!!」と命じるが頑として動かない。
「主人の忠盛が今夜、闇討ちにされると聞いたので、退去するわけにはゆかぬ!!」
殿上では忠盛が刀を抜いてキラリと光らせ、庭には武装した家貞が控えているので、貴族らには手も足も出ない。
闇討ちを諦めた。
その腹いせに、鳥羽上皇の御前で忠盛が舞いはじめると、陰湿な侮辱の言葉を浴びせる。
2番目の、忠盛追い落としの策略だ。
忠盛を怒らせて実力行使をさそい、殿上から追放しようという算段だろう。
上皇の前で、よもや刀を抜くことはあるまい、と踏んだ。
「伊勢平氏は すがめなりけり」
「伊勢瓶子(へいじ)は 素瓶(すがめ)なりけり」
平家は桓武天皇の末裔だが、伊勢の国司として久しく伊勢地方に土着。
地下(じげ)階級(昇殿を許されない階級)として、貴族社会から遠ざかっている。
当時の人々は、平家を「伊勢平氏」と呼びならわしていた。
それでは、なぜ、「伊勢平氏は すがめなりけり」が、忠盛を侮辱することになるのか。
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腹巻姿
お侍さんも、よかったら
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平家物語の群像 平忠盛④侮辱
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