箏(そう)の琴
六条御息所/上村松園画
『源氏物語の里』
無量光寺山門前の「蔦(つた)の細道/恋の通い路」は、光源氏が「浜辺の館」から明石の君の住む「岡辺の館」へ通った道
「蔦の細道」に、明石市教育委員会による文学遺跡「源氏物語の里」の解説板がある
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
そんなとき、几帳の紐に触れて箏の琴が音をたてた。
その機会をとらえて源氏、
「かねてよりお噂に聞いております琴の音をお聴かせ願えませんか」
〇 むつごとを 語りあはせむ 人もがな
憂き世の夢も なかば覚むやと
愛の言葉を語り合う人がいれば、悩み多いこの世の夢も覚めやしないかと
和歌を詠みかけると、
明石の君、
〇 明けぬ夜に やがて惑へる 心には
いづれを夢と わきて語らむ
明けやらぬ闇夜に迷っている心には、いずれが夢かうつつかすら分かりません
意外にも、か細い声ながら歌を返してくれた。
はかなげで上品な気配は、伊勢の六条御息所を思わせる。
明石の君にしてみれば、何も知らされず寛ろいでいたところにいきなり源氏が訪ねてきたのだ。
驚くのも無理はない。
当時の貴族社会では、花婿になる条件に合格した男を、女房が姫君の寝所に案内した。
『源氏物語』のこの件では、女房ではなく実の父親(明石の入道)がその役割を果たしている。
男が女の家に三夜つづけて通えば、結婚が成立した
明石の君はいたって聡明で、人柄は慎ましい半面、気位は高い。
紫の上よりも一つ年下で、際立った美人ではないが長身ですらりとしている。
幼少のころから、どうしても上流貴族に嫁がせたかった父親の薫陶が怠りなく、趣味・教養とも申し分ない。
契りを結んだあと、源氏はたいくつな秋の夜長が短く感じられるほど明石の君を愛おしいと思うようになる。
しかし、いつまでも添い寝していられるわけもなく、夜が明ける前に、心をこめた言葉を残して帰って行った。
浜辺の館に戻ると、後朝の文を、土地の者たちに知られぬよう密かに届けさせた。
後朝(きぬぎぬ)の文 逢瀬の明けた朝、男性が女性に贈る手紙
紫の上に知られることを気にかけているのだ。
入道は使者を盛大にもてなして喜びを現したいところだが、そうもいかず残念がっている。
源氏は時折、岡部の館へお忍びで通った。
「浜辺の館から岡部の館まで遠いし、口さがない漁師の子どもたちに見られるかも知れない」
いつしか間遠になった。
源氏にとって、紫の上はそもそも恋い焦がれている藤壺の身代わりだったが、離れて暮らすうちに本物の愛情を感じるようになっていた。
源氏の足が途絶えがちなのを、明石の君は嘆いた。
「やはり、思っていた通りだわ」
都から一時的に明石に下ってきた貴人と恋仲になった挙句、男が帰京するとともに捨てられた女たちを知っている。
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大橋巨泉さんの遺言です。7月12日死去。享年82。
ひと月ほど前から旅先に携行することを優先してパソコンを『ウルトラブック』にしましたが、
自宅でゆっくり使う時はかなり心もとない
「病み上がりの人を(東京都知事の候補者として)連れてきてどうするんですか!?」
弱者切り捨てを地で行く政治屋の発想の貧困と恐ろしさ。
こういう手合いが、別の場所では、だれかさんのように(新しい判断)で、「わたしは弱い立場の皆さまの味方です。介護など福祉の充実に全力を尽くします」などと平気でいう。
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明石22明石の君
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