鳥羽上皇
『平家物語』の作者(吉田兼好の『徒然草』によると信濃前司行長)は、平忠盛に好意的だ。
清盛を、やや悪意をもって描写しているのと好対照である。
同じ平家一門でも、権力の階段を上りかけたころの溌剌とした人物と、最高権力を手にした横暴な独裁者に対する世間の風評の反映だろうか。
知力にも洞察力にも決断力にも胆力にも富んだ、すぐれた政治的人物として登場させている。
忠盛が、鳥羽上皇によって清涼殿・殿上の間に昇殿することを許されて貴族の仲間入りをすると、旧貴族らの憎悪と嫉妬がすさまじい。
『平家』の作者に、因循姑息な無能集団と決めつけられている彼らは、何としてでも忠盛を追い落とそうとする。
3度試みるが、すべて失敗に終わった。
まず、殺害を企てる。
「五節豊明の節会(ごせつとよのあかりのせちえ)」とよばれた宴会の夜。
闇討ちにしようとしたが、事前に気づいていた忠盛は、周到かつ大胆な対応策を立てていた。
鍔(つば)のない大型の短刀を、正装の服にわざと人目に付くように下げて、宮中に参内する。
そして、薄暗い灯りに向かってゆっくり刀身を抜き出すと、耳ぎわの髪の毛にあてた。
刀は研ぎ澄ました氷の刃のように、ヒヤリと冷たく光った。
貴族連中に対する、武家の計算された威嚇行動である。
「変なマネをしたら、ただちに斬る!!」
威嚇を、もう一つ用意していた。
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平家物語の群像 平忠盛③宴会と威嚇
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