夕月夜
明石の浦から淡路島を望む
左から琵琶・琴・和琴・箏
日本で「こと」と呼ばれる楽器には、①琴(きん) ②箏(そう) ③和琴(わごん) ④一絃琴 (いちげんきん/須磨琴とも)
⑤二絃琴 (八雲琴)の5種類がある。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
須磨で暮らしていたころには考えられなかったほど、都から見舞いの手紙が次々と舞い込んできた。
のどかな夕月夜。
明石の浦をはるかに見渡していると、源氏は懐かしい二条院の池の水面を連想して無性に都が恋しくなった。
夕靄のなかに、淡路島が浮かんでいる。
〇 あはと見る 淡路の島の あはれさへ
残るくまなく 澄める夜の月
しみじみ眺めている淡路島の哀しい情趣さへすっかり照らしだす澄みわたる今宵の月よ
源氏はひさしく手を触れていなかった「琴」を袋から取り出して、掻き鳴らした。
その様子を見守っていた従者らは、ひとり望郷の念にひたっている主人の気持ちを察して互いに目配せしている。
源氏がきわめて難易度の高い「広陵」という曲を秘術の限りを尽くして弾くと、その妙なる琴の音色が松風の音や波の音と響き合って、入道の娘のいる岡辺の館にも聞こえてきた。
音楽にたしなみのある若い女房たちは、流れてくる音色のただならぬ美しさを身にしみて感じているようだ。
心が震えている。
楽の音など聞き分けられそうもない地元の田舎者たちは、あまりに素晴らしい調べにうっとりして浜辺に浮かれでた。
意外に冷たい浜風に吹かれ、風邪を引いてくしゃみしている者らがいる。
入道が、読経を怠って駆けつけて来た。
「源氏の君の奏でられる琴の音色にじっと耳を傾けておりますと、捨て去ったはずの俗世が改めて思い起こされます。
来世に生まれたいと願っております極楽浄土はかくやと想わせる、今宵の妙なる楽の音でございます」
入道は気持ちが高ぶって感涙にむせんでいる。
年老いた入道は涙を止めることができない。
腕に覚えのあることも手伝ってか、自ら楽器を弾きたくなり、岡辺の館に「琵琶」と「箏の琴」を取りにいかせた。
入道は「琵琶」を手にすると、文字どおり琵琶法師となって抒情的な曲を弾きはじめた。
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明石⑪楽の音
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