東大寺・南大門 金剛力士像(仁王像)
仁王会(にんのうえ) 京都・醍醐寺
天下泰平・鎮護国家を祈願して、『仁王般若経』を読誦する法会(ほうえ)
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使いの者に都の様子をあれこれ尋ねると、たどたどしいが懐かしい京ことばで話してくれた。
「何日もつづく激しい雨風は天の啓示だから、近いうちに宮中で仁王会が催されるだろうと、京雀たちは噂しております。
上達部方は道路がふさがって参内(さんだい)できず、政(まつりごと)はずっと途絶えております」
上達部(かんだちめ) 公卿・上流貴族(三位以上)
源氏は顔を曇らせた。
「そうか、都もひどい天候か」
「本当に、ただ事ではございません。
ただこちらのように、大粒の雹(ひょう )が地の底へ突き抜けるかのように激しく地面を叩いたり、雷鳴がいつまでも止まないというようなことはございませんでした」
使いの者が身体を震わせている様子を見て、源氏は都に残している人々に思いを馳せ、いっそう心配になった。
「この世は、このまま滅びてしまうのであろうか」
翌朝未明から、嵐が地鳴りのような轟音とともに一段と凄まじい勢いで吹き荒れる。
須磨ノ浦では、高潮が荒々しく幾重にも重なって次々に押し寄せ、いまにも周囲の山々を一気に呑み込んでしまいそうだ。
闇夜にはひっきりなしに不気味な稲光が走り、間髪をいれず、いまにも落ちてきそうな雷鳴がとどろく。
その場に居合わせた者たちの心胆を寒からしめた。
惟光や良清たちを、恐怖のどん底に陥れる。
「わたしが、どんな罪を犯したというのだ。なぜ、こんなにも絶望的な憂き目に遭わなければならないのか。
大事な両親にも愛しい妻子にも会えないまま、死なねばならないとは」
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アメリカ様、ご期待に添えるよう頑張ります
歌姫/三宅由佳莉さん(海上自衛隊東京音楽隊所属のソプラノ歌手)も、有事には戦場に駆けつけるのだろうか。
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明石③絶望
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