「賢木(さかき)」 源氏物語第十帖
裳着の儀(女子の成人式) 風俗博物館
内裏(だいり) 帝の私的な生活空間
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
世間の人々は若紫の素性をしらず、源氏が宮中から気に入った若い女房を連れてきたのだろう思っている。
それゆえ、父の兵部卿宮に二条院での生活ぶりを知らせて、裳着(もぎ)の儀を立派に執り行おうと計画した。
ところが、若紫はあれ以来すっかり源氏を嫌っている。
「長いあいだ源氏の君を信頼しきって、まつわり付いていたのが浅はかだったわ」
日毎に悔しさが募って、源氏を避けてばかりいる。
源氏が冗談をいうと、不愉快で迷惑そうな顔をする。
年が改まった。
元日には例年のように、まず「院」に参上してから「内裏」そして「東宮」を訪れたあと、左大臣家に足を運んだ。
久しぶりに顔をみる夕霧はすっかり成長して、源氏が抱き上げてあやすと無邪気ににこにこする。
目もとや口もとが、ますます東宮(藤壺との子)と似てきた。
「だれか、不審に思わないだろうか」
かつて幼い東宮をだいて御簾(みす)の向こうから現れた桐壺帝が、源氏にいったことがあった。
「この子は、そなたと実によく似ている。そっくりだ」
あのときは全身が小刻みに震えて、本当に生きた心地がしなかった。
斎宮の伊勢への下向が近づくにつれて、御息所はひましに心細くなった。
葵の上亡きあとは、身分からしても六条御息所が源氏の正妻になるだろうと世間では噂していた。
御息所邸でも、少なからず期待している。
ところが、源氏の足はすっかり遠のいてしまった。
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賢木①六条御息所
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