一条大路 大内裏は今の二条城周辺
女車(女房車、女性が乗る牛車)
網代車(あじろぐるま)
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世を捨てた尼たちも、群衆の波に押しつぶされそうになりながら前後左右に揺られている。
葵の上は日ごろから出不精で、祭り見物のために外出するようなことは滅多にない。
しかもこのところ悪阻(つわり)のために気分が悪く、出かけるつもりは毛頭なかった。
しかし、若い女房たちは祭りを見たくてしかたがない。
「わたくしたちだけで見物するのはつまりません。
光君を拝見するために、なんのご縁もない人々がはるばる片田舎から妻子を引き連れて都に上ってくるといいますのに。
北の方さまがご覧にならないなんてことはございませんわ」
大宮(葵の上の母。桐壺院の妹)も、
「今日は、ご気分が少しおさまっているようですから」
日がだいぶ高くなってから、供回りがあまり目立たないようにして出かけた。
一条大路にはすでに物見車がびっしりと立ち並んでいて、葵の上一行の牛車をとめる場所がない。
並んでいる牛車は、立派に飾り立てた女車が多い。
そのうち、葵の上の従者たちが、場所をつくるために何輛かの女車をどかせにかかった。
左大臣は人格者ということだが、従者たちは権柄ずくで乱暴なことをする。
多くの女車の中に、少し使い古した網代車で下簾(したすだれ)の様子などが由緒ありげで趣味のいいのが2輛あった
女主人は、車のずっと奥の方に身を隠すようにしている。
明らかに、人目を避けている。
下簾の端からわずかにのぞいている袖口や裳の裾、汗衫(かざみ、薄手の上着)などの衣装の色合いは、みるからに清楚で上品だ。
葵の上の従者たちが、その網代車をどかそうとすると、
「これは、さらに、さやうにさし退けなどすべき御車にもあらず」
これは、決して、そのように押し退けたりしてよいお車ではありませぬぞ
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「自分と周囲の利害のために動くのが政治屋、歴史をつくる仕事をするのが政治家」
まさに国民の意識が問われる
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葵③車争い
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