.御帳台(みちょだい)
源氏は帰京するとまず宮中に参内して、鞍馬での出来事を桐壷帝に報告した。
帝は、病み上がりの息子の様子をみて、
「やつれたのではないか」
ちょうど居合わせていた左大臣、
「私どもの邸で1、2日ゆっくりお休みなさいませ。今からお供いたしましょう」
源氏は気が進まないが、義父である左大臣の情にほだされて一緒に内裏を退出した。
左大臣は自分の牛車の上席に源氏を乗せ、自身は末席に座った。
義父がいろいろと気を使ってくれることを源氏はかねてから気の毒で心苦しく思っている。
夫婦仲がうまくいっていないからだ。
左大臣邸は、源氏がいつ訪れてもいいように磨き上げられ飾り立てられていた。
しかし源氏が邸内にはいっても、正妻の葵の上はいつものことだが奥にこもったまま。
父親に強く促されて、やっとその端正な姿を見せた。
物語のなかのお姫様のように美しく理知的な葵の上は、夫である源氏と目を合わすことも挨拶をすることもない。
身じろぎもせず、行儀よく座っている。
気詰まりな空気のなか、源氏が声をかけた。
「すこしは世間の妻たちのようなやさしい心遣いを見せてほしいものです。私がひどい病気に苦しんでいたのに、『お加減は如何ですか』とさえ尋ねて下さらない。やはり寂しいものです」
夜になって源氏が御帳台の中へはいっても、葵の上は入ろうとしない。
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