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若紫⑥尼君の心配

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若紫の系図← クリック 拡大 

若紫(紫の上) 光源氏 藤壺 兵部卿宮 尼君 僧都

若紫
伝・土佐光起筆 『源氏物語画帖 (若紫)』  … … …
飼っていた雀の子を逃がしてしまった若紫と、柴垣から隙見する源氏


「成人した暁には、どれほどの名花になるか」と思わせる可愛らしい顔立ちだ。

黒髪は扇を広げたようにゆらゆらと靡いて、泣き顔は手でこすって赤くなっている。

「どうしたの。友達とけんかでもしたの」

尼君が尋ねると、少女は泣きながら、

「雀の子を、犬君(いぬき:女童)が逃がしたの。伏籠(ふせご)の中に閉じ籠めておいたのに」

ふたりの面差しは、どこか似ている。

源氏は、「少女は、尼君の娘なのだろう」と思った。


ひとりの女房が立ち上がって、庭の方に向かった。

「うっかり者(犬君)がまたまた失敗をやらかして姫君を困らせるとは。雀の子は、どこへ行ったのかしら。折角なついていたのに。烏などに見つかったら大変だわ」

髪はゆったりと長く、見目麗しい女のようである。

少納言の乳母」と呼ばれているから、少女の乳母(めのと)なのだろう。


尼君が、少女の幼さを嘆いている。

「いつまでも子供っぽいわね。わたしが今日明日とも知れぬ身なのに、そんなに雀の子が大事なの。生き物を飼うのは罪作りなことだと、いつも言って聞かせているでしょう」

「もっと近くへ、おいで」

少女は、尼君の前に畏まって座った。

顔立ちがとても優美で、眉のあたりがほんのりと匂い、子供っぽく手で髪を掻き上げた額つきや髪の生え際がこの上なくかわいらしい。

あどけなさの中に、すでに天稟の美しさをのぞかせている。

「行く末が楽しみな美少女だ」

源氏少女に見とれているうちに、思わず涙をこぼした。

似ている、

「限りなう心を尽くしきこゆる人」にあまりにも似ている。





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