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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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若紫⑤若紫デビュー

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六条御息所 物の怪(六条御息所の生霊)

小柴垣 小柴垣 (こしばがき)


入道はなぜ、に、『上流に入れなかったら、海に身を投げろ』というほど思い詰めているのだろうか。気味が悪くないか」


「そろそろ、日が暮れかかってまいりました。発作は、お起こりにならないようです。早く二条院へ……」

従者の言葉を、行者が制した。

「御病気のほかに、物の怪も憑いております。今夜はこちらで静かに加持祈祷などをして、明日の朝にでもお帰り下さい」

源氏は、山寺の宿坊での旅寝に興味があり、

「それでは、明朝、山を下りよう」

惟光だけを残して、他の従者はみんな都へ帰した。


春の日は長く、暮れるまでにはまだ時間がある。

源氏惟光は、春霞に紛れて小柴垣の辺りへ出かけた。

さっき、女たちがたくさん庭へ出てきた家である。

小柴垣からのぞくと、西側の部屋で尼君がお勤めをしている。

病身らしく弱々しげに読経している尼君は四十過ぎに見え、痩せてはいるが頬はふくよかで目もとは涼やか。

見るからに、相当の身分のようだ。

尼そぎの髪が、きれいに切り揃えられている。

源氏は、感じいった。

「長い髪よりも、斬新で好ましい」  当時、長い髪は美人の条件

尼君のそばに、小ざっぱりとした女房がふたり座っている。

ほかに、女童(めのわらわ 少女)が数人、家から庭へ出たり入ったりして遊んでいる。

そのうち、白い袿(うちぎ)の上に山吹襲の着馴らしたのを重ねた十歳ほどの少女が、こちらへ駆けてきた。

一緒に遊んでいる他の少女たちとは、まるで違っている。

「成人した暁には、どれほどの名花になるか」と思わせるほど可愛らしい顔立ちだ。





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