兵庫県明石市大観町10-11
『蔦の細道 (恋の通い路)』 光源氏が、明石の方の住む「岡部の館」を訪れるために通った道 昨年の晩秋、光源氏になったつもりで、「蔦の細道」を歩いてみました。しかし、平成の明石の方に出会うこともなく、10~15mほどで空しく「恋の通い路」は終わりました。
出家の身で、贅沢な暮らしにこだわるなどもっての外です。
「ただ、若い妻子のために一人だけ山にこもって仏道修行するわけにもいかないという事情があるのかも知れません」
先日、播磨へ下向した折、入道を訪ねました。
「都ではくすぶっていましたが、播磨では広大な土地と豪邸を所有しており、豊かな余生を送るための財産も十分のようです。国司の地位を利用して蓄えた資産でしょう。来世のための勤行も怠りなく、出家して品格が上がったように見受けられました」
従者は入道について縷々述べたか、源氏の関心は、
「ところで、その娘とは」
入道にはとんと関心がないようだ。
「器量も気立ても悪くありません。代々の国司が求婚しているようですが、入道は取り合わないそうです」
そして、常々娘に言い聞かせております。
「『私が落ちぶれたので、一人娘のお前には都の上流貴族に嫁いでもらいたい。もし、私の死後、それが叶わなかったら、海に身を投げなさい』」
自ら望んだことだが、しかもあり余るほどの財を築いたが、入道は地方官であることが不本意だったようだ。
源氏は、面白く聞いていた。
従者たちは、笑い合っている。
「海龍王の后にでもしたいくらいの、自慢の娘というわけか」
・海龍王……海中に住む竜神で海と雨の支配者
「高望みというか気位が高いというか、困ったものだね」
「美人といっても、どうせ田舎娘じゃないか。こんな辺鄙な所で、古臭い親に育てられたのでは……」
「いや、そうでもないようだ。母親は由緒ある家柄の出で、都の高貴な家々からきれいな若い女房や童女などを探し集めて、都風に世話をさせているらしい」
従者たちが好き勝手にしゃべっているところに、珍しく源氏が割り込んだ。
「入道はどうして、娘に、『海に身を投げろ』とまで思い込んでいるのだろうか。気味が悪くないか」
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先日、播磨へ下向した折、入道を訪ねました。
「都ではくすぶっていましたが、播磨では広大な土地と豪邸を所有しており、豊かな余生を送るための財産も十分のようです。国司の地位を利用して蓄えた資産でしょう。来世のための勤行も怠りなく、出家して品格が上がったように見受けられました」
従者は入道について縷々述べたか、源氏の関心は、
「ところで、その娘とは」
入道にはとんと関心がないようだ。
「器量も気立ても悪くありません。代々の国司が求婚しているようですが、入道は取り合わないそうです」
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自ら望んだことだが、しかもあり余るほどの財を築いたが、入道は地方官であることが不本意だったようだ。
源氏は、面白く聞いていた。
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「いや、そうでもないようだ。母親は由緒ある家柄の出で、都の高貴な家々からきれいな若い女房や童女などを探し集めて、都風に世話をさせているらしい」
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