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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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空蝉②紀伊守の屋敷

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$吉備路残照△古代ロマン-空蝉の寝室  
 「空蝉の寝室に忍び込む光源氏」 歌川広重



紀伊守の屋敷がよろしいかと存じます。つい最近、川の水を引き入れて涼しくなったと聞いております」

紀伊守(きいのかみ)は源氏の家臣である。

「そうか。少し気分が悪いから、牛車に乗ったまま入って行ける屋敷はありがたい」


源氏の急な来訪を知らされてちょっと困った風情の紀伊守から、返事がきた。

「父・伊予介(いよのすけ)の家で慎しむことがございまして、今、親戚の女たちがわたしの狭苦しい家にきております」

「失礼がなければよろしいのですが……」


「しやいや、人は男でも女でも多い方が賑やかで楽しい」

そう応えさせた源氏は、『雨夜の品定め』での頭中将の発言を思い出していた。

「中流階級の女は面白い」

紀伊守の親戚の女たちは、まさしく中流である。


源氏は、紀伊守のもてなしを受けながら聞き耳を立てていた。

襖の向こうの母屋に女たちが集まって、ヒソヒソ話をしているのが聞こえる。

どうやら源氏のウワサをしているようだ。



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