平安時代以降の皇族や公家の平常服
脇息 (きょうそく)
脇に置いてもたれ掛かるための安楽用具。 江戸時代まで使われた
「草深い家に、艶っぽい女が住んでいる」という左馬頭の話に、源氏は釈然としなかった。
「そうだろうか。上流の中にさえ、魅力的な女は滅多にいないのに」
白い着物を重ねた上に直衣をゆるやかに掛けて脇息に寄りかかっている源氏は、まことに優美である。
どんな女を連れてきても、釣り合いがとれないだろう。
左馬頭(さまのかみ)が、ふたたび話題を変えた。
「女友達としてはともかく、一生の伴侶を選ぶとなると本当に難しい。男にしても、朝廷に仕えて国を支えるような人物を見つけるのは大変です」
「しかし、国は一人や二人で治めるわけではありません。何とかなります。それにひきかえ、家を切り盛りする主婦は一人です。できないでは済まされない幾つかの大事なことや、細々とした無数の雑事があります。責任重大です」
「また、『いいなぁ~』と思って結婚した女がひどかったり、生真面目で家事をテキパキとこなすが情緒を欠いていて味も素っ気もなかったりします。思慮が深いのか、いきなり出家して尼になられるのも困ります」
「結婚相手には、家柄や器量よりも真面目で素直に夫に従い、向上心のある女がいいでしょう」
若い二人にひとくさり講釈をたれたあと、左馬頭はいよいよ経験談を披瀝し始めた。
「わたしが初めて関係した女は決して美人ではありませんでしたが、心からわたしに尽くしてくれました。ただ一つの欠点は、極端な焼きもち焼きだったことです」
「そのことで、ある日、口ゲンカになり、激しく言い争っているうち、矢庭にわたしの指に食いつきました」
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