○ 帚木の 心を知らで 園原の 道にあやなく 惑ひぬるかな 光源氏
「『焼きもち焼きにはもうウンザリだ、別れよう』というと、女は、『たいした男でもないあなたに一生懸命尽くしてきたのに、浮気ばっかり。もう我慢の限界、別れましょ』」
「売り言葉に、買い言葉でした」
「それからしばらく足が遠のいたのですが、ある冬の夜、宮中行事が終わって他に行くあてもなく、その女を訪ねたところ、暖かそうな衣服をきちんと畳んで用意してくれていました」
「しかし、本人は親元に帰っていて不在でした」
「ヨリを戻そうとしたところ、女は、『浮気男は、もうこりごり。年を重ねるにつれて、ますます辛くなります』」
「取り付く島もありません」
「つまらない意地の張り合いをしているうちに、女は亡くなってしまいました。いろいろなことで相談できる相手でしたし、裁縫や染め物の腕はたいしたものでした」
「ああいう実のある女を、正妻にすべきでした。今も、しみじみと思い出すことがあります」
ひと呼吸おいて、左馬頭(さまのかみ)の話は、「指食いの女」とは対照的な「木枯らしの女」に移った。
「木枯らしの女」は、洒落っ気があって風流を解し、何でもこなす才媛だが、ちょっとした跳ねっ返りだったらしい。
「同じころ通っていた女は、和歌は巧みで文字は美しく、琴をみごとに奏でました。器量もよく、話しは面白い」
「付き合うにはもってこいのタイプですが、これがかなりの色好み。ほかにも通っている男がいました」
「10月頃の月明かりの夜、宮廷を退出しようとしている私の牛車に同僚が乗り込んできました。そして、何とその女の家の前を通りかかると、同僚はさっさと降りて行くではありませんか」
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