青海波(せいがいは)を舞う光源氏(右)と頭中将(左)
部屋に無造作に置いてある文箱に入っているラブレターなど、源氏にとってさほど大事な部類ではあるまい。
興味をそそるような艶書はないが、頭中将は枚数の多さに感心しながら源氏にたずねた。
「この手紙はA子さんですね。これはB子ちゃん。あっ、マダムCからも……」
お互いの交友関係を知っているので、ほぼ差出人の見当がついた。
「今度は、あなたが女にもらった懸想文を見せて下さい」
源氏が、頭中将にいう。
「私のところになど、たいした手紙はきません」
牽制しあっているうちに、頭中将が話題を変えた。
「世の中に欠点のない女はいません。最近になって、ようやく分かってきました」
こうして、世に名高い『雨夜の品定め』が始まる。
まず源氏と頭中将ふたりによる「女性談義」だが、若い源氏は主に聞き役だ。
「高い身分にふさわしい教養があって人柄も良さそうな女は、よく見ていると薄っぺらで、他人を小馬鹿にします。
多分、いつもチヤホヤされているからでしょう。
またお付きの女房たちが良い事ばかり言い触らすので、割り引いて考えなければなりません。
身分の高い女は、つまらないです」
こうした書きぶりは、「高い身分」ではない作者・紫式部の反骨精神か。
「でも、何の取り柄もない女はいないでしょう」
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