五輪塔
(仏教における万物の構成要素である、地、水、火、風、空の五大要素をかたどった)
都とその周辺で、家屋などの下敷きになって亡くなった者の数はおびただしい。
四大種(世の中を構成している、地・水 ・火・風)のうち、「水・火・風」は時として災害を起こしたが、「地」は人々と社会を支え続けてきた。
その「地」が、大きく揺らいだ。
「今度こそ、この世の終わりかも知れない」
そう囁きあった住民たちは家の引き戸やふすまを固く閉ざして、天が鳴り地が揺れるたびに声高に念仏を唱え、わめき、叫んだ。
年を重ねた者らが、「この世はいつしか滅びる定めだが、まさか今日・明日のこととは思わなかった」などと話していると、彼らの話を聞いていた子供たちは怖くなって泣きだした。
後白河法皇は大地震が起きた頃は、新熊野神社で花を供えていた。
折しも、足元が激しく揺らぐ。
法皇は死者の穢れに触れたので神事に障りがあってはならないと、急いで輿に乗り六条殿へ戻った。
しかし、御所や内裏の建物はことごとく崩壊しているので、法皇は南庭に仮屋を建て、そこに仮住まいする。
後鳥羽天皇も、住まいを移した。
女院や宮たちも、それぞれ輿や車に乗って、別の場所に移り住んだ。
崩れている内裏へ呼ばれた天文博士が馳せ参じて告げる。
「午後10時から12時の間に、必ずや余震があるでしょう」
恐ろしいことこの上ない。
その昔、文徳天皇の斉衡3年(856)3月8日の大地震では、東大寺の大仏の頭が落ちた。
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平家物語の群像 大地震②この世の終わりか
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