従三位平重衡卿墓
京都伏見区醍醐外山街道町
妻に引き止められると、重衡は、
「私もゆっくりしたい。だが、私は天寿を全うできる身ではないのだ」
後ろ髪を断ち切って出発した。
大納言典侍が門の外に転び出て、声を限りに泣き叫ぶ。
殺されるために出かける夫を見送る妻の心情はいかばかりか。
重衡も涙で目が曇って前が見えない。
「やはり、会うべきではなかった」
後悔ばかりが募った。
興福寺の大衆は重衡の身柄を受けとると、処分について評議した。
「重衡殿は重罪人だ」、「仏敵である」、「東大寺と興福寺の周囲を引き回した上で、首まで地中に埋めるか、首をのこぎりで引くべきだ」
老僧たちが、たしなめた。
「そのような手荒なことは僧のすべきことではない。武士に任せて、木津の辺りで斬らせよう」
武士たちは重衡を預かって、木津川へ連行した。
大衆や武士らを含めて、高みの見物は何千、何万か数も知れない。
そこへ重衡に仕えていた知時(ともとき)という者が、主の最期を見届けようと馬に鞭打って駆けつけた。
急いで馬から飛び下りる。
群衆を掻き分けながら、重衡のそば近くに寄った。
「殿の最期を、知時が看取りに参りました」
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平家物語の群像 重衡被斬③会うべきではなかった
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