大鎧 おおよろい クリックして拡大して下さい
維盛が鎧をきて馬に乗ろうとすると、10歳になる六代と8歳の夜叉御前が走ってきて、維盛の鎧の袖や草摺 (くさずり) にしがみついて泣きじゃくった。
「父上、どこへ行かれるのですか。私たちも参ります」
そこへ資盛 (すけもり:建礼門院右京大夫と恋仲) と清経 (きよつね)、有盛 (ありもり)、忠房 (ただふさ)、師盛 (もろもり) の弟たち5騎が、中庭にやって来て馬上から叫んだ。
…… 建礼門院右京大夫 ③運命の人
「兄上、行幸の列は、はるか先を進んでいます。何をぐずぐずしているのですか」
維盛は馬にまたがって出発しかけたが、引き返して縁側に馬を寄せ、弓で御簾をめくり上げた。
「見よ。幼い者たちがあまりに慕うので、慰めているうちに遅れてしまった」
かすれ声で泣きながらいうと、弟たちも鎧の袖を濡らした。
維盛が召し抱える若侍に、19歳の斎藤五宗貞と17歳の斎藤六宗光という兄弟がいる。
富士川の戦いの前夜、東国武士のすさまじい戦いぶりを説明して、心優しい西国武士 (平家軍) の戦意を喪失させた斉藤実盛 (さねもり) の息子たちである。
維盛⑤斎藤別当実盛
東京都文京区湯島 (湯島天神の近く)
ふたりは維盛が乗っている馬の左右の手綱を持って、「どこまでもお供します」
しかし、維盛は二人に頼んだ。
「お前たちの父実盛は、篠原の戦いで討ち死にした」
「あの時、お前たちが一緒に行きたいと言ったとき、実盛は許さなかった。今日の日があることを、見通していたのかも知れない。六代を残して行く。お前たちに、頼みたい」
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平家物語の群像 維盛⑬六代をよろしく頼む
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