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平家物語の群像 源頼政⑤弓張月の いるにまかせて

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$吉備路残照△古代ロマン-源頼政の鵺退治  源頼政公鵺退治之像
   長明寺 兵庫県西脇市高松町


近衛天皇は、頼政の手柄に対する褒美として 『獅子王』 という剣を与えた。

宇治左大臣 (藤原頼長 悪左府) が取りついで、御前の階段を半ほどまで降りてきた。

頃は4月10日過ぎ、ほととぎすが二声・三声鳴いて、雲間に飛んでいった。

頼長

○ほととぎす 名をも雲居に あげるかな

不如帰が空高く鳴いているが、そなたも宮中に武名をあげたことよ

詠いかけると、頼政は右の膝をつき、左の袖を広げて、月を横目に見やりつつ

○弓張月の いるにまかせて

弓を射るに任せて、偶然にしとめただけです

と詠んで、剣を賜って退いた。

頼政は弓矢を取っても無双だが、歌道にも優れていると、天皇も臣下もみな感心した。

妖怪変化は、丸木舟に入れて流したという。

また応保の頃、二条院が天皇だったとき、鵺 (ぬえ) という化鳥 (けちょう 怪しい鳥) が宮中で鳴き、帝を悩ませていた。

そこで、また頼政が呼ばれた。

5月20日過ぎの宵のころ、鵺は一声鳴いたきり。

真っ暗闇で姿が見えず、矢の狙いを定めることができない。

そこで、頼政は大きな鏑矢を取ってつがえ、鵺の声がした方へ射上げた。

すると、鵺は鏑矢の音に驚き、虚空で 「ひいひい」 と鳴いた。

二の矢に小さな鏑矢を取ってつがえて放つと、鵺と鏑矢が一緒に落ちてきた。

宮中はざわめき、天皇は頼政に御衣をお与えになった。





今度は、大炊御門 (おおひのみかど) 右大臣藤原公能 (きんよし) が預かって、頼政に与えるとき、「昔、楚の養由基は、はるか雲のかなたの雁を射た。頼政は、雨の中で鵺を射た」と感心していった。

そして、詠んだ。

○五月闇 名をあらわせる 今宵かな

五月の闇の中で、そなたは今宵立派な武名をあらわしたことよ

頼政が続けた。

○たそがれ時の 過ぎぬと思うに

黄昏時も過ぎ、人の姿も見分けられぬ暗闇となりましたので、わが名を名乗ったまでです

そして、御衣を肩に掛けて退出した。

その後、伊豆国を賜わると、嫡男の仲綱を受領に任じ、自身は三位となって、丹波国の五箇庄と若狭国の東宮川を所領とした。

そのまま静かに過ごしていたらよかったものを、つまらぬ謀反を起こして、以仁王を巻き添えにして、滅んでしまった。



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