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Channel: 吉備路残照△古代ロマン
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平家物語の群像 源頼政④雲の中に怪しき物の姿あり

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$吉備路残照△古代ロマン-源頼政対鵺図 初代・歌川国安 「源頼政対鵺 (ぬえ) 図」

公卿らの評議の結果、 「堀河院も毎夜、物の怪に怯えられたことがある。その時は、源義家が弓を3度鳴らして、

『八幡太郎義家』 と名乗ると物の怪は消えた。今度も武士にやらせよう」 ということになった。

当時、宮廷や貴人の邸宅では、病気や雷鳴など不吉な出来事があった時は、弓弦 (ゆみづる) を鳴らして邪気を払う習わしがあったようだ。

武士は武力とともに、魔物を退散させる役割も担っていたことになる。

源雅頼の推挙で、頼政が選ばれたが、頼政には不満だった。

「(原文) 昔より朝家に武士を置かるる事は、逆反の者を退け、違勅の輩を亡ぼさんがためなり。目にも見えぬ変化の物つかまつれと仰せ下さるること、いまだ承り及ばず」

「昔から、朝廷に武士を配置するのは反逆者を退け、勅命に従わない連中を滅すため。目に見えない妖怪変化を退治せよなど、聞いたこともない」

とは言いながら、「(原文) 勅宣なれば召しに応じて参内す」

頼政は、腹心の遠江国の住人、猪早太 (いのはやた) を伴って参内した。

そして、二重の狩衣 (かりぎぬ) を着、山鳥の尾を矧 (は) いで作った矢を二筋、滋籐 (しげどう) の弓に添えて持ち、南殿の大床で待機した。

矢を二筋手挟 (たばさ :手や脇にはさんで持つ) んだのは、雅頼が、 「妖怪変化を退治できる者は頼政だろう」

と推挙したので、一筋の矢で妖怪変化を射損じたときは、二の矢で雅頼の首の骨を射るためであった。

天皇が怯える時刻が近づくと、東三条の森の方から黒雲が湧きだして、御殿を覆った。

「(原文) 頼政きつと見上げたれば雲の中に怪しき物の姿あり。射損ずるほどならば世にあるべしとも覚えず。

さりながら矢取つて番ひ、南無八幡大菩薩と心の内に祈念して、よつ引いてひやうと放つ。手応へしてはたと当たる。得たりやをうと矢叫びをこそしてけれ」



「頼政がきっと睨み上げると、黒雲の中に怪しい物が見える。射損じれば、とても生きながらえることはできない。

そう覚悟を決めると、矢を取って弓弦につがえ、 『南無八幡大菩薩』 と念じ、引き絞って、ひゅっと放った」

矢は、みごと妖怪変化に命中。

「してやったり」、頼政が喚声をあげると、猪早太が駆け寄ってきて、落下してきた獲物を取り押さえる。

そして、刀身だけでなく柄まで、柄を握る拳までも突き抜けろとばかりに、続けざまに九回激しく腰刀を突き立てた。

身分の上下を問わず、その場に駆けつけ、松明 (たいまつ) に火をつけると、頭は猿、身体は狸、尾は蛇、手と足は虎のようで、鳴く声は鵼 (ぬえ) に似ている。

恐ろしい、などという生易しいものではない。

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