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千手の前は、駿河国手越 (静岡市駿河区手越) の庶民階級出身である。
母親が千手寺 (静岡県磐田市千手堂) の千手観音にお参りして授かったことから、千手と名づけられたという。
そんな彼女の生い立ちは、『平家物語』に登場する女性たちの中ではきわめて珍しい。
というのは、固有名詞をもって『平家』に登場する女性の大部分が、都育ちでしかも貴族階級に属しているからだ。
もちろん都育ちだが貴族ではない者や、都育ちではないが準貴族のような者もいる。
例えば、白拍子の祇王は、庶民階級のヒロインだが都の近郊で生まれ育った。
同じ白拍子の仏御前は、北陸の加賀国出身だが、父親は都から派遣されていた、花山法皇ゆかりの那谷寺五重塔の塔守である。
祇王①清盛と祇王 参照
一方、巴は木曾の山国育ちだが、木曾随一の大豪族の娘である。
巴②色白く髪長く、容顔まことに優れたり
すなわち、生粋のイナカの庶民階級出身である千手の前は、きわめて稀な存在なのだ。
しかし、『平家物語』の作者は、そんな出自の千手の前を、がさつだったり無教養だったりするような女として描いているわけではない。
むしろ逆である。
千手の前は優美で教養にあふれ機知に富み、人の気持ちを察する能力にも長けていた。
しかも類まれな美女。
都の優れた女性たちに一歩も引けを取らないヒロインなのだ。
そんな千手の前が、生まれて初めて恋を知った。
新・平家物語(1)
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平重衡物語
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寿永3(1184)年3月27日、一ノ谷の戦いで義経軍によって生け捕りにされた平重衡が鎌倉に到着する。
源頼朝は、南都を焼き討ちした仏敵重衡を問い詰めるが、重衡の大器量に感服して、戦争犯罪人ではあるが丁重にもてなした。
平家物語の群像 平重衡⑰重衡、頼朝と対面 参照
そして、南都の衆徒には何か言い分があるだろうと、伊豆の住人狩野宗茂に預けた。
宗茂は気持ちの優しい男で、重衡のために色々と心を砕く。