源氏物語名場面58
玉鬘 壱参
折おしき敷
狭い薄板を折り四囲の縁にした角盆
足つきの折敷もある
神事や食事に使う
🔲
日暮れ方
屏風の向こう側に予約客が大勢で
だが
足音を忍ばせてやって来た。
見るからに身分の高そうな
女君ふたりに数多の男女が従っている。
屏風の両側とも
大声を出したり余計な物音を
立てたりしないように気を遣っていた。
■
豊後介が
夕食を《折敷》に載せて運んできた。
乳母に、
「お膳を用意できなくて申し訳ないのですが
これを姫君に差し上げてください」
■
その時
屏風の向こうに聞き覚えの
ある男の声を聞いて驚いた女がいた。
屏風越しに
身体を休めている*右近である。
*右近 故夕顔の侍女
右近は
亡き夕顔の遺児である玉鬘を探すために
《十一面観世音菩薩》の御利益に与か
ろうと度々長谷寺に参籠していた。
■
右近が屏風のすき間からのぞくと、
確かに見たことのある男だ。
しかし、誰か、どうしても思い出せない。