源氏物語名場面㉘
六条御息所 壱
光源氏
【野宮神社】に六条御息所を訪ねる
□
「正妻の葵の上が亡くなった。
次は
身分的にも相応しい六条御息所が
源氏の君の*正妻に選ばれるであろう」
★
*正妻
意外に思う方もおられるでしょうが
紫の上は正妻ではありません。
正式な結婚の
手続きを踏んでいないからです。
朱雀帝に
押し付けられた正妻女三の宮の降嫁以来
紫の上の人生は暗転します。
★
京雀たちの専らの噂である。
御息所の女房たちも大いに期待した。
しかし
葵の上の夕霧出産直後の急死を巡って
疑念をもった源氏の足は遠のき
態度は冷たくなった。
都で暮らす
ことが辛くなった御息所は
源氏への未練を断ち切るためにも
娘の*斎宮と共に伊勢に下る決心をする。
いよいよ
伊勢へ下向する日が迫ってきた。
★
*斎宮/斎王
【伊勢神宮】に奉仕した未婚の内親王か女王。
帝の即位毎に一人選ばれ
【野宮神社】における3年間の
*精進潔斎を済ませ伊勢に下向した。
*精進潔斎
肉食を断ち行いを慎んで身を清めること
★
六条御息所ほどの
魅力的で才能豊かな貴婦人と
このまま別れるのはさすがに忍びない。
源氏は手紙を何回か届けたあと
晩秋の【野宮神社】に御息所を訪ねた。
御息所は
「源氏の君が来ても会うまい」
心に決めていたが
冷たい態度を取り続けるほど強くはない。