源氏物語名場面㉖
明石 弐
八月十三日 名月の夜
馬上の源氏と惟光は
「娘の奏でる琴の音色を聴いて欲しい」
明石入道に導かれ
明石の君の【岡辺の館】へ向かう。
■
そのころ都では、
朱雀帝の夢枕に桐壷院が立ち、
怒りに燃えた目で帝を睨みつけていた。
朱雀帝は
「光君を守れなかった故のお怒りか」
畏怖し
弘徽殿大后に伝えるが相手にされない。
ほどなく帝は目を患い
右大臣は死去、大后は病に臥せった。
□
明石入道から
源氏にお誘いの手紙が届いた。
「近いうちに
娘の奏でる琴の音色を
お聴き頂けませんでしょうか」
数日後の夕刻
源氏は
惟光を伴って【岡辺の館】へ赴いた。
源氏と入道、明石の君の三人で
琴の共演をしたあと
若い二人は入道の思惑通り結ばれる。
■
源氏は紫の上が「風の便りに知る」
よりもと
翌朝早くお詫びの手紙を認めた。
◇
またまた貴女に嫌われそうですが、
明石の浦で儚い夢を見てしまいました。
○しほしほと まづぞ泣かるる かりそめの
みるめは海人の すさびなれども
貴女を思うだけでさめざめと泣けてしまいます
仮初めの添い寝は海人の遊びに過ぎないのですが―
参へ―