源氏物語名場面㉕
明石 壱
浜辺の館
現善楽寺戒光院
源氏を
明石に招いた明石入道の住居跡。
源氏は【浜辺の館】で暮らすことになる。
■
源氏一行の舟は
日の出前
明石を目指して須磨の浦を漕ぎ出した。
明石入道の【浜辺の館】
は国司時代に蓄えた財力に任せて
京風にとても洒落た趣向を凝らしてあった。
源氏は当面そこで暮らすことになる。
【浜辺の館】に落ち着くと
早速紫の上や藤壺尼宮、朧月夜
に近況を知らせる手紙を書き送った。
入道は日々勤行三昧に余念がないが、
家の繁栄のため
娘を源氏に嫁がせるのが悲願である。
そのために源氏を招いたのであり
顔を会わせる度に*娘のことを仄めかした。
*娘/後の明石の君
源氏との間に
入道悲願の孫娘/明石中宮を儲ける
源氏は
都で留守を守っている紫の上を
想うと現地妻を持とうとは思わないが
やはり
多情な性分は抑えられなかったようだ。
明石の君は
偶然垣間見た源氏の
洗練された優美な容姿に彼
我の如何ともし難い格差を感じて
身のほど知らずの
父入道の目論見が恥ずかしくなっていた。
◇
秋立つ頃
源氏が暇に飽かせて
琴を爪弾いていると音色は
明石の君や入道のもとに届いた。
入道が源氏に申し出る。
「娘の奏でる琴の音色も
なかなかなものでございます。
いつか是非
源氏の君にお聴き願いたいものです」
◇
そのころ都では
朱雀帝の夢枕に桐壷院が立ち
怒りに燃えた目で帝を睨みつけていた。