源氏物語名場面㉔
須磨 弐
流謫の地
須磨の浦を眺めながら
都の懐かしい人々を偲ぶ光源氏
(仮)
尾形月耕画
国立国会図書館所蔵
■
須磨に移ってほぼ1年後の三月初め。
「源氏の君は心労続きなので
お祓いをなさったら如何でしょう」
周囲の声を受けて、
陰陽師を招き波打ち際でお祓いをさせた。
お祓いが始まるや浦風が吹き荒れ、
空が俄かに掻き曇り、
間もなく土砂降りになった。
命からがら住居に逃げ帰り
ほっとしてうたた寝をしていると
源氏の夢見枕に亡き父桐壷院が立った。
「光よ、
ナゼこんなに見苦しい場所にいるのか。
《住吉の神》のお導きに従って、
須磨の浦を去れ!」
◇
翌朝早く
舟に乗った人物が浜辺に現れ、
従者の良清に取り次ぎを願い出た。
良清は訝しむが、
源氏は
昨夜の亡父の言葉もあり面会する。
その人物とは明石入道、
播磨国の『前国司』である。
源氏が須磨に来ていると
いう噂を耳にして以来
入道は
家の繁栄のため
娘を是が非でも源氏に
嫁がせたいと願っていた。
曰く
「《住吉の神》の
『嵐が去ったらすぐに須磨へ舟を出せ』
とのお告げに従って参りました」
源氏は夢枕での亡父の言葉
「須磨の浦を去れ!」
を想起し明石へ移ることにした。
次回は、明石 壱