源氏物語名場面
朧月夜⑰ 肆
稲妻 御帳台
これほど恐ろしい
気配の中での房事はあるまい。
しかし
二人とも危険な逢瀬であれば
あるほど燃えあがる性分のようだ。
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こうして
朧月夜は朱雀帝最愛の女性で
ありながら源氏にのめりこんでゆく。
具体的な描写こそないが『源氏物語』が
官能的な女性を描くのは朧月夜が初
それだけでなく
朧月夜は有力な東宮妃候補だ。
【右大臣家】が
益々栄えるための掌中の珠である。
そんな朧月夜が
源氏と密通していることが発覚
すれば宮中が上を下への大騒ぎになろう。
右大臣と
弘徽殿大后は怒髪天を衝くに違いない。
ある日の夜明け近く
朧月夜の御帳台で目覚めた源氏が
「もう帰らなければ―」
思い始めた矢先
急に
雨が激しく地面を叩いたと思う間もなく
稲妻の閃光とともに雷鳴が耳をつんざいた。
源氏は
帰ろうにも帰れず寝台に横になっていた。
手引きしている女房は気が気でない。
伍へ
第八帖『花宴』