源氏物語名場面④
夕顔の死
夕顔の死
1650年代《盛安本 源氏物語絵巻》
「夕顔」断簡 個人蔵(フランス)
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8月15日
名月の夜が明け初める時分
夕顔の六条の家で一晩過ごした
源氏は
しぶる夕顔を誘って天井の至る所
に大きな蜘蛛がいくつも巣を張ってい
るさながら廃墟のような邸に連れ出した。
だれに気兼ねすることもなく
日がな一日戯れあった
16日の夜
源氏が寝入りばなにうとうと
していると夢枕に美しく気高い女人が
恨めしそうな様子で現われるではないか。
「わたくしの気持ちをご存知ですのに、
どうしてこんな凡庸な女を―。
あまりにも心外で辛うございます」
恨み言を呟くや
源氏の隣に寝ている夕顔に襲い掛かった。
頭中将そして源氏と時代の寵児
ふたりに愛された夕顔はまだ19歳だった。
六条御息所の生霊
東京国立博物館所蔵