源氏物語名場面①
空蝉逃げた
源氏から逃げた空蝉
17歳のモテ男が初めて女君に振られた話
歌川/安藤広重画
男性貴族は通常、
女房の手引きで女君の寝所に入った。
女房たちには深窓育ちの姫君の
婿取りという仕事があったのである。
3夜、
男性が続けて通えば結婚が成立した。
(あからさまな女性の人権無視)
ただ源氏は2度、
女房の手引きなしで忍び込んでいる。
人妻の藤壺宮と空蝉の寝所である。
しかも、
藤壺宮はただの人妻ではない。
父桐壺帝の后である。
すなわち義母。
小袿こうちぎ
空蝉/蝉の抜け殻
小袿を抜け殻のように脱ぎ捨て
て逃げたことから空蝉と呼ばれた。
源氏はその残された小袿を持ち帰る。
○空蝉の 身をかへてける 木のもとに
なほ人がらの なつかしきかな 源氏
あなたは蝉が殻を脱ぐように
小袿を脱ぎ捨てて逃げ去ったが
その木の下で
あなたの人柄を懐かしく偲んでいます
○空蝉の 羽に置く露の 木隠れて
忍び忍びに 濡るる袖かな 空蝉
空蝉の翅に置く露が木に隠れて見えないように
わたしもひそかに涙で袖を濡らしております
(夫のある身ですから―、御免なさい)
この気持ちは藤壺宮も同じです。
作者の紫式部は
自分のお腹を痛めた子が
気持ちの上でも振られることに
耐えられなかったのかもしれません。