那須大八郎と鶴富姫 椎葉村観光協会
「源氏の討手(うって)が来たぞ~」
平家の落人たちが隠れ住んでいる集落に、急を告げる声が響き渡った。
戦いは2時間ほどで終わった。
谷間のあちこちに、討たれた死体がころがっている。
落人たちが身に着けている衣服は、ぼろぼろだ。
「安心いたせ。大人しくすれば男たちも許す」
大八郎が叫ぶと、物陰から数名の男たちがぞろぞろと現れた。
「危ない!」
叫び声がするや、大八郎の足元に矢が突き刺さった。
高い木の茂みに、人影が動いた。
大八郎が弓を引いて放つと、ひとりの男が樹上から落ちてきた。
「無駄な手向かいはやめよ。私は那須与一宗高の弟、大八郎宗久」
大八郎が、凛とした声で名乗った。
扇の的で名高い那須与一の名は、落人たちも知っていた。
落人たちは、戦える相手ではないことを思い知る。
…… ……
○与一、重ねて辞せば悪(あ)しかりなんとや思ひけん、「はずれんは知り候はず、御諚(ごぢやう)で候へば、つかまつてこそ見候はめ」とて、御前をまかり立ち、黒き馬の太うたくましいに小房(こぶさ)の鞦(しりがい)かけ、まろぼやすつたる鞍置いてぞ乗つたりける。
与一は、重ねて辞退するのはまずいと思ったのだろう、「外すかも知れませんが、ご命令だからやってみます」といって御前を下がり、黒い馬の太く逞しいのに小房のついた鞦をかけ、まろぼやの家紋を描いた鞍を置いて乗った。
○弓取り直し、手綱かいくり、汀(みぎは)へ向いて歩ませければ、御方のつはものども、後ろをはるかに見送つて、「この若者、一定 仕(つかまつ)り候ひぬと覚え候ふ」と申しければ、判官も頼もしげにぞ見たまひける。
弓を持ち直し手綱を操りながら海へ向かって馬を歩ませると、味方の侍たちが、「あの若者なら、きっとやり遂げるだろう」と話していたので、義経も頼もしそうに見ておられた。
…… 原文に忠実な訳ではありません ……
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平家物語の群像 那須与一⑤この若者、一定 仕り候ひぬ
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