平家物語歴史館 高松市
平家物語を少しでも知っている社会人や学生に、「平家物語に登場する人物の名前を、思いつく順にいえ」と尋ねると、多くの人がまず挙げるのが平敦盛であり那須与一だそうだ。
面白いことに、平清盛や源頼朝そして後白河法皇ら、当時の社会を動かした政界の大立者を思い浮かべる人はほとんどいないらしい。
敦盛と与一に焦点が当たるのは、それぞれ一回きりだ。
ふたりが当時の社会に及ぼした影響など、なきに等しい。
そんな彼らがなぜ、800年の時を超えて我々の心の中に住んでいるのだろうか。
やはり、日本人好みの名場面を伴っているからに違いない。
敦盛には哀れなまでに潔い最期のシーンがあり、与一には華麗でみやびな見せ場がある。
ともに一幅のすぐれた絵画である。
しかも、これらの場面は必ずといっていいほど絵本に載っているし、また教科書にも掲載される。
…… ……
○「あれはいかに」と見るほどに、舟の内より齢十八、九ばかりなる女房の、まことに優に美しきが、柳の五衣(いつつぎぬ)に紅の袴着て、皆紅(みなぐれなゐ)の扇の日出だしたるを、舟のせがいにはさみ立てて、陸(くが)へ向いてぞ招いたる。
「あれは?」と見ると、舟の中から18、9歳ほどの優美な女房が、柳の五衣に紅の袴を着けて、紅色の地に金箔で日の丸を描いた扇を、舷に沿って棚のように渡した左右の脇板に挟み、こちらへ向かって手招きをしている。
○判官、後藤兵衛実基(ごとうびやうゑさねもと)を召して、「あれはいかに」とのたまへば、「射よとにこそ候ふめれ。ただし大将 矢面(やおもて)に進んで傾城(けいせい:美女)を御覧ぜば、手だれにねらうて射落とせとのはかりことと覚え候ふ。さも候へ、扇をば射させらるべうや候ふらん」と申す。
義経が実基を呼んで、「あれはどういうことか」と尋ねると、実基は、「扇を射よというのでしょう。但し、殿が矢の届く所に出て、あの美人をご覧になれば、弓の上手に殿を狙わせる計略でしょう。そうだとしても、誰かに扇を射させるのがよろしいでしょう」と申し上げる。
…… 原文に忠実な訳ではありません ……
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