殿下乗合(てんがのりあい)事件
平清盛の孫にして重盛の次男、当時13歳の資盛(すけもり)が、10代の若い侍ばかりを連れて、鷹狩りに出かけた。
その帰り道、大炊御門(おおいのみかど)通りと猪熊(いのくま)通りの交差点で、参内(さんだい:宮中に参上すること)途中の摂政・藤原基房(もとふさ)の行列と鉢合わせになった。
当時、格下の資盛が馬を下りて、下馬の礼をとるのが習わしである。
だが、若い彼らは、基房の家来たちが、「何者ぞ、馬より降りよ、降りよ」と言うのも聞かず、平家一門の威光を笠に着て、行列を通り抜けようとした。
無礼に怒った基房の家来たちは、薄暗いこともあって、相手が清盛の孫とは気づかず、あるいは気づかぬ振りをして、資盛たちを馬から引きずり降ろして、辱めた。
六波羅に逃げ帰った資盛に泣きつかれた清盛は激怒。
「たとえ摂政殿下でも、清盛の身内なら遠慮すべきものだ。幼い資盛に恥辱を与えるとは。思い知らせてやる」
さっそく、基房の屋敷に兵を差し向けようとした。
このことを聞いた重盛が、清盛邸に駆けつけて来た。
「相手が頼政などの源氏の連中であれば、わが平家一門の恥でしょう。今度の場合、摂政殿下の前で、下馬の礼を取らなかった資盛たちの方に非があります」
資盛の供をした若い侍たちには、「無礼を働いたこと、私から基房公にお詫びしておく」と言い聞かせて帰らせた。
しかし、清盛の怒りは収まらない。
わが息子ながら、その聖人君子ぶりが苦手な重盛には黙って、60人ほどの侍を集めた。
「21日に、基房公が外出される。どこでもよいから待ち伏せして、従者どもの元結い(髪の毛)を切って、資盛の恥をそそげ」
荒くれどもは、しかと承知して下がっていった。
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平家物語の群像 平重盛②殿下乗合事件
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