源氏物語
第34帖若菜上
源氏:39~41 紫の上31~33 女三宮13~15 夕霧18~20
明石の君:30~32 明石女御:11~13 柏木:23~25
六条院
【春の御殿】、【夏の御殿】、【秋の御殿】は寝殿造り。
【冬の御殿】は、明石の君が地方官( 国司)
の娘ゆえ寝殿造りではない。
なお、【春の御殿】の主人が住む
〈寝殿〉には源氏ではなく女三宮が住んでいる。
夕霧が咳払いをして注意を促すと、女三宮と女房たちは慌てて奥の部屋へ逃げるように去った。
予期せぬこととはいえ、人前に顔をさらすようでは不用心が過ぎる。
一方、恋焦がれている女三宮の顔をはっきり見てしまった柏木は、源氏と恋路を張り合おうとは畏れ多くて毛頭思わないが、気持ちだけでも伝えようと小侍従を通して手紙を届けた。
○ よそに見て 折らぬなげきは 繁けれと
名残恋しき 花の夕影
遠くから見るばかりで手折ることのできない悲しみは深いけれど
あの夕方に見た花の美しさはいつまでも恋しく思われます
女三宮は夕影と柏木に顔を見られたことを思い出して顔を真っ赤にした。
女三宮は、ことあるごとに源氏にきつく戒められていた。
「くれぐれも夕霧にお姿を見られないよう注意なさい。
貴女は幼くて不用意だから、いつか見られるかもしれない」
もし二人に見られたことを源氏に知られたら、ひどく叱られるだろう。
女三宮は見られたことよりも、源氏に叱られることに怯えている。
返事を書くどころではない。
小侍従から素っ気ない和歌が柏木に届いた。
○ いまさらに 色にな出でそ 山桜
およばぬ枝に 心かけきと
今さら顔色にお出しなさいますな。
高嶺の花に想いを懸けるとは--
第34帖『若菜上』 完