源氏物語
第33帖藤裏葉
光源氏39 紫の上:31 東宮(春宮) 明石の君:30
明石の姫君:11 夕霧:18 雲居の雁:20
前駆ぜんく
行列などの前方を騎馬で進み
先導することorその人。
車争い 第9帖「葵」
住吉如慶じょけい画
「六条御息所と葵の上の車争い」源氏物語画帖
御息所が生霊となって、憎い葵の上をとり殺した主因。
前駆なども混乱するほどの大人数ではなく簡略にしたことで、紫の上一行の行列は例年にまして格別な趣があった。
紫の上は祭の日の明け方に上賀茂神社へ参詣して、帰りに葵祭の行列を見物するために予約していた桟敷席に着いた。
それぞれの牛車を紫の上の後ろに連ねていた六条院の女君たちに仕えている女房らも桟敷席を占めた。
さっそく、うわさ好きの京雀たちが互いの袖を引きあっている。
「あの女房は、誰それの○○だよ」、「あれは、きっと○○だ」
女房たちさえ世間に知られているほどの源氏の威勢である。
やや遅れて桟敷席にやって来た源氏は、およそ10年前の苦い出来事を思い出していた。
秋好中宮の母・六条御息所の牛車が、葵の上の供の者らによって壊された時の騒動をである。
「権勢を頼んであのような不埒な騒ぎを起こしたのは、愚かで実に心ないことであった。
葵の上はほどなく御息所の生霊に襲われて亡くなった」
源氏の想いは、ふたりの子供たちにうつる。
「葵の上が自分の死と引き換えのように産んだ夕霧は、臣下として徐々に出世している。
御息所の娘の秋好中宮は、中宮(皇后)という並びなき地位についておられる。
子供たちの今を思えば、しみじみと感慨深いものがある」
入内(明石の姫君が東宮に入内する)には北の方が付き添うのが古来の習わしだが、紫の上にはある考えがあった。