二十四帖 胡蝶
光源氏.太政大臣36 紫の上28 蛍兵部卿宮 花散里22
秋好中宮27 夕霧15 明石の君:27 柏木20
玉鬘 24 髭黒右大将 明石の姫君8
内大臣(頭中将)39
紫式部
『源氏苑』 滋賀県大津市
石山寺 西国三十三所第十三番
県内外の文化人らでつくる創祀そうしの会が
昨年6月から計画を進めていた『玉鬘神社』が建立された。
神社は玉鬘姫命たまかずらひめのみことを「主祭神」とし、
夕顔姫命ゆうがおひめのみことと右近姫命うこんのひめのみことを祀る。
夕顔は玉鬘の母、右近は夕顔と玉鬘に仕えた侍女。
奈良県桜井市初瀬
『玉鬘神社創祀の会』写真提供
玉鬘は気分が悪く臥せていたが、女房たちがしきりに、
「お返事を早く」
と硯を持ってきたので、仕方なく手紙に目を通した。
源氏の筆使いは、いつものことながら見事である。
○ うちとけて 寝も見ぬものを *若草の
ことあり顔に むすぼほるらむ
〈幼くこそものしたまひけれ〉
うちとけあって共寝をしたわけでもないのに、
あなたはどうして訳あり顔で悩んでおられるのでしょう
〈子供っぽいですよ〉
玉鬘は返事をださないわけにもいかず、次のように書いた。
「お手紙を拝読いたしました。
気分が悪うございますので、これにて失礼致します」
ずいぶんぶっきら棒な文面だが、源氏はそこに玉鬘の気の強さをみてほくそ笑んだ。
自分の気持ちを打ち明けてからというもの、源氏は女房たちがいない時はこれ迄の思わせぶりではなく、執拗に玉鬘を口説くようになった。
老いへの焦りだろうか、颯爽とした源氏の姿はもはや見る影もない。
玉鬘は不快に感じるだけではなく精神的に追い詰められて身の置き所がなくなり、とうとう病に倒れた。
しかし、女房たちは源氏を玉鬘の実の父親と思い込まされているので、玉鬘は女房たちに相談するわけにはいかない。
「もし今のようなありさまが少しでも世間に漏れたら、人々の物笑いになるであろう。
もし父の内大臣が探し出してくださっても、きっとお蔑みになるに違いない」
悩みや心配だけが募ってくる。
蛍兵部卿宮や髭黒右大将などは、父親代わりの源氏の意向が必ずしも否定的ではないと伝え聞いて、熱心に玉鬘に求婚の手紙を寄越してくる。
玉鬘が実の姉であることを知らない柏木も、源氏が自分を認めていることを小耳にはさみ、ただもう嬉しくて、熱い想いを訴えようと玉鬘の住む「西の対」周辺をうろうろしている。
*若草
若い女性を例えていう。
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