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初音⑫男踏歌

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二十三帖 初音

 

光源氏.太政大臣36  紫の上28  花散里22

 明石の君:27  夕霧中将15   玉鬘 24  明石の姫君:8

 

男踏歌おとことうか

【春の寝殿】の南庭に*男踏歌の*殿上人が訪れた。
左から源氏玉鬘明石の姫君紫の上
男踏歌の様子を見物している。

 

 

家柄別 主要登場人物

 

 

 


今年は*男踏歌がある。

 

その行列が内裏から『朱雀院』へ、そして『六条院』にやって来た。

 

『六条院』は遠く、到着したのは明け方近くになった。

 

月が冴えわたり淡雪が少し降ったあとの庭の景色がなんとも美しい。

 

殿上人には音楽の名手が多く、太政大臣の前でかなり緊張しているようだが笛の音色はさすがに素晴らしい。

 

 

女君たちには【春の御殿】に来るよう前もって知らせていたので、東西の「対の屋」や「渡り廊下」などに用意された部屋で見物した。


玉鬘は初めて、明石の姫君と対面する。

 

紫の上には、几帳を隔てて挨拶した。

 

 

 

 


選りすぐりの殿上人を集めた「男踏歌」の一行の中でも、源氏の長男の夕霧や内大臣家の柏木弁の少将は際立って美しく目を引いた。

 

一方、【春の御殿】から眺めている女君たちは、いずれ劣らぬ華やかな着物の袖口を御簾の間から溢れるようにこぼれ出させている。

 

その夥しい色彩の美の競演は、あけぼのの空に、霞の中から絢爛豪華な春の錦を広げたように見渡された。

 

 

一行はパフォーマンスが終わると、恒例によって、源氏から祝儀の綿布をいただいて【六条院】を退出した。

 

 

 

 


夜がすっかり明け、女君たちはそれぞれの『御殿』に戻って行った。

 

源氏は日が高くなるまて横になって、身体を休めた。

 

「せっかく女君たちが揃っておられるのだから、是非、『女楽』を催したいものだ。

近々、わが家だけで『*後宴』を開くことにしよう」

 

 

 

*男踏歌女踏歌もあった

 

 平安時代、正月14日または15日に、四位以下の人が催馬楽さいばら 

 を歌いながら宮中から貴族の邸を巡回した行事。
 但し、紫式部当時はすでに廃れていたので想像による描写である。

 

 なお、『源氏物語』は50年ほど前の醍醐天皇の時代を想定して書か

 れている。

 

*殿上人
 令制で官職が三位以上の者および四位そして五位のうちで昇殿を許

 された者。

*後宴 ごえん

 公的あるいは大きな宴のあと、場所や日時を改めて催された宴。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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