二十三帖 初音
光源氏.太政大臣36 紫の上28 花散里22
明石の君:27 夕霧中将15 玉鬘 24 明石の姫君:8
光源氏と末摘花
明け方、雪あかりの中で今まで見たこともない
ほど醜い末摘花の顔をみて仰天する源氏。
源氏は須磨へ落ちるとき末摘花には挨拶をせず、
帰京してからも連絡しなかった。
それでも、末摘花は源氏の来訪をひたすら待ち続ける。
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源氏のおかげで生活の基盤がしっかりしているから出来ることだ。
その辺のことは、二人ともちゃんと心得ている。
【六条院】で正月特有の慌ただしいなかにも華やいだ日々を過ごしたあと、源氏はようやく【二条東院】を訪れた。
まず、末摘花。
落ちぶれているとはいえ、宮家出身という身分を考慮して、けっして恥をかくことがないようそれなりの待遇をしている。
末摘花はもともと世にも稀な醜女だが、たった一つの取柄であった立派な長い美しい髪はいまや見る影もない。
年末の「衣配り」で贈った柳模様の装束もまったく似合っていない。
悪いとは思いながらも、源氏は末摘花と面と向かって対坐する気にはならなかった。
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寒いのか、末摘花は鼻をますます赤くしてぶるぶる震えている。
冬がくる前に届けさせた温かい皮衣はすべて、醍醐寺の兄・禅師の君が訪れたとき帰りに持たせたという。
人がいいのも結構だが、いささか度が過ぎている。
【二条院】の蔵から絹織物などを持ってこさせて、末摘花に与えた。
女房たちによると、皮衣は見当たらなかったそうだ。
「これらを重ね着してお使いください。
もしこれから何かお困り事があればいつでも結構です、遠慮なく申し付けてください。
わたしはうっかり者で、なにかと気が付かない性分なのです」
年始回りの最後は、空蝉が暮らす部屋である。
尼僧の部屋らしく静かに仏道にいそしむ雰囲気が漂っているが、空蝉のたおやかで控えめな立ち居振る舞いは源氏の心を惹きつけた。
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