二十三帖 初音
光源氏.太政大臣36 紫の上28 花散里22
明石の君:27 夕霧中将15 玉鬘 24 明石の姫君:8
1 下げ髪の鬢批 びんそぎ
2 檜扇 ひおうぎ 衵扇 あこめおおぎ
3 小袿 こうちき
4 衣 きぬ 袿 うちき
5 単 ひとえ
6 濃長袴 こきのながばかま
7 下げ髪
『風俗博物館』 京都市
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控え目で慎ましい明石の君の立ち居振る舞いは、ほかの女君たちとは違っている。
生来の性質もあろうが、身分社会において【六条院】の女君たちの中で一人だけ地方官 (国司) の娘である自覚からくる態度でもあろう。
明石の君の長く美しい黒髪が、あの「衣配り」のときに贈った優美な白い*小袿こうちぎにしっとりと流れるように掛かっている。
その様子が息を呑むほどに優美で、源氏はつよく惹かれた。
「新年早々、紫の上を怒らせてしまう」
そう考えると気が引けるが、その夜は『冬の御殿』に泊まった。
『春の御殿』では、朝がまだ明け切らないうちから紫の上付きの女房たちが騒いでいた。
「源氏の君はよりによって、元日の夜を紫の上さまとお過ごしになられなかったとは。
いったい、何を考えていらっしゃるのでしょう」
*憤懣やる方ない。
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源氏はまだ暗いうちに急いで【春の御殿】に戻った。
「そんなに慌てて、まだ暗い中をお帰りになることもございませんのに」
源氏を見送ったあと、明石の君はひどい寂しさに襲われていた。
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源氏が、取り付く島もないほど冷たい表情をしている紫の上のご機嫌をとろうとした言い訳が振るっている。
妙におかしい。
*憤懣やる方ない
元日の「姫はじめ」は、奈良時代から「子孫繁栄」や「五穀豊穣」を祈
る縁起のいい行為とみなされていた。
それゆえ、元日の夜は正妻(格)と過ごすのが習わしだった。
その社会通念を破った源氏に対して、紫の上と紫の上つきの女房た
ちは怒り心頭なのである。
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