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若紫⑳尼君を見舞う

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内裏 清涼殿 (帝の私的な居住空間) 清涼殿から近い部屋を与えられた(中宮・女御・更衣)ほど出自が高い。源氏の母の父は大納言だから、もっとも遠い桐壺をあてがわれた

廂の間 廂の間@清涼殿


宮中からの帰りに六条京極を通りかかったとき、荒れ果てた屋敷がみえた

「亡き按察の大納言(あぜちのだいなごん)のお屋敷でございます。先日ついでがあって伺いましたら、『尼君が衰弱されたので心配しております』と女房たちが申しておりました」

惟光(これみつ)が説明すると、

「お気の毒に。すぐにお見舞いに来るべきであった。なぜ、もっと早く知らせなかったのだ。挨拶をしてこい」

惟光源氏の来訪を告げると、女房

「困りましたわ。ここ数日、尼君はますます衰弱されました。源氏の君にお目にかかることなど、とてもおできになれません」

しかし、すぐに帰すのも畏れ多いので、南の廂(ひさし)の間を片づけて源氏を通した。

「せめてお見舞いのお礼だけでもと存じまして。むさ苦しい御座所で恐縮でございます」


源氏は、襖ごしに尼君に声をかけた。

「お見舞いに伺わなければと思いながら、つれないお返事ばかり頂いておりますので、遠慮いたしておりました。ご容体が悪くなっておられるとは存じあげず、案じておりました」

尼君は、女房をとおして、

「具合が悪いのは、いつものことでございます。もったいなくもお立ち寄り下さいましたのに、お目にかかってお礼を申し上げることもできません。

孫娘のことですが、このさき万が一にもお気持ちがお変わりにならないようでしたら、成人した暁に是非ともお目をかけて下さいませ。

幼いあの子を残して死んでゆくことが気がかりで、往生の妨げにもなりそうに思えます」

近いので、尼君の心細そうな声が途切れ途切れに聞こえる。

あの子が、お礼の一言も申し上げられる年頃であれば宜しいのですが」

源氏女房に頼んだ。

「かわいらしい姫君のお声を、ぜひお聞かせください」

姫君は、お休みでございます」

ちょうどその時、向こうから小さい足音が近づいてきた。

おばあさま源氏の君がいらしているそうですね。どうしてお会いにならないの」

女房たちはばつが悪く、「しっ、お静かに」と制している。

「だって鞍馬のお寺で、源氏の君を御覧になったら気分の悪いのが治ったとおっしゃっていたわよ」


源氏はおもしろく聞いていたが女房たちが困っているので、聞こえなかったふりをして、丁重なお見舞いの言葉を伝えるとそそくさと屋敷をでた。

「なるほど、まだまだ子供だ。しかし、それだけに教育のしがいがある」





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若紫 21 尼君、逝去

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結び文 結び文

むらさきそう 紫草


「なるほど、まだまだ子供だ。しかし、それだけに教育のしがいがある」


翌日、源氏尼君あてに丁重なお見舞いの手紙を書いて、小さな結び文をつけた。

○いはけなき 田鶴の一声 聞きしより

    葦間になづむ 舟ぞえならぬ

*いはけなき(幼けなき)  *田鶴(たづ) 

ひな鶴(若紫)の一声を聞いてからというもの (早くそちらへ行きたいのに) 葦間を分けて行き悩む舟(源氏)のじれったいことです


若紫の声は、よほどかわいかったようだ

納言の乳母が、返事をしたためた。

尼君は、今日一日も危い容体でございます。今から鞍馬の山寺に移ります。昨日お見舞いいただいたお礼は、あの世からさせて頂くことになりましょう」


秋の夕暮れはただでさえしんみりとして寂しいのに、源氏は心の休まるひまもなく恋い焦がれている藤壺のことを思いつめていた。

今ごろ、どれほど悩み苦しんでおられることだろう。

一方では、藤壺の姪にあたる幼い姫君を手にいれたいという気持ちがますます募っている。

○手に摘みて いつしかも見む 紫の

    根に通ひける 野辺の若草

*いつしかも…いますぐに~したい

早く手に摘みとって自分のものにしたいものよ。紫草(藤壺)にゆかりのある野辺の若草(若紫)を



久しくご無沙汰していた鞍馬の尼君へお見舞いの使いをやると、兄の僧都から返事がとどいた。

「先月の20日ごろ、はとうとう身罷りました。人の世の定めとはいえ、悲しいものでございます」

源氏は世の無常をしみじみと思い、それから幼い姫君の身の上を案じた。

「ひとり残された姫君は今ごろどうしているだろう。子供心に尼君を恋い慕っているに違いない」

源氏は自身が幼くしてに先立たれ、ほどなく祖母も亡くした当時のことを思いだして、心のこもったお見舞いをした。


姫君源氏は存命しているが、今風にいえば二人とも愛人の子である。

のなかでは身分の低い更衣(こうい)の子である源氏は、ゆくすえ兄弟のなかで肩身が狭いだろうということを懸念して、桐壺帝は最愛の息子を臣籍に降下させたのだ。


少納言の乳母から、行き届いた返礼がとどいた。





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若紫 22 源氏と幼い若紫

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夏直衣</font> 夏直衣(のうし)


葵祭
 葵祭(賀茂祭) 毎年5月15日 *下に、二日前の葵祭の動画


少納言の乳母から、行き届いた返礼がとどいた。


忌みが明けて、しばらく経ったころ。

姫君が都の屋敷に帰っていることを知った源氏は、数日後の夜に姫君をたずねた。

寂寥として荒れたはてた屋敷であり、住んでいる人もいたって少ない。

幼い姫君は、どんなにか心細いことだろう。

少納言の乳母源氏尼君の臨終の様子などを泣きながら話しているうちに、源氏ももらい泣きの涙で目をはらした。


兵部卿宮が、姫君をご自分のお邸に引き取ろうと仰っておられます。

ただ、亡くなられた母君が生前、心配しておられました。

あの子は大勢いらっしゃる北の方のお子たちの中で侮られはしないだろうか、苛められはしないだろうか』

母君はいつも北の方にひどい仕打ちを受けて、つらい思いに耐えておられました。

源氏の母・桐壺更衣が、桐壺帝の第一夫人格である弘徽殿女御らにいじめ抜かれたことと実によく似ている。


姫君が亡くなった尼君を慕って泣き臥しているところへ、女の童(めのわらわ)たちがやってきた。

「直衣を着たお方がいらっしゃいましたよ。兵部卿宮がおいでになったのかしら」

小さな足音が、源氏の方へ近づいてくる。

「ねえ、少納言。直衣を着ているお方はどこなの。父宮がいらしたの」

その声が、なんともかわいらしい。

源氏が、応えた。

宮様ではありませんが、関係がなくはありませんよ。こちらへいらっしゃい」

姫君は、「あの素敵な方のお声だわ」と聞き分けて恥ずかしくなり、乳母にすり寄った。

「ねえ、あちらへ行きましょうよ。眠いんだもの」

姫君乳母の袖を引っぱると、源氏

「どうして逃げようとなさるのですか。わたしの膝の上でお寝みなさい。もっとこちらへいらっしゃい」

乳母が、姫君源氏の方へそっと押しやった。





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若紫 23 姫君はどこへ

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若紫の系図姫君(若紫)の系図


祇園祭 京都祇園祭
 八坂神社/祇園社の祭礼 毎年7月1日から1か月間


乳母(めのと)が、姫君源氏の方へそっと押しやった。

父・兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)の邸では継母にいじめられると心配していた亡き祖母の思いが無意識のうちにそうさせたのだろう。


明け方、二条院にもどった源氏と入れ替わるように兵部卿宮がおとずれて姫君を引き取ると告げた。

「こんな古びた屋敷で暮らしている幼いが不憫だ。やはり、あちらの邸に引き取ろう。何の気がねもいらない。乳母には部屋をあたえるから、今までどおり仕えてほしい。

むこうにも小さい姫たちがいる。仲良くやっていけるだろう」

姫君を呼び寄せると源氏の移り香が衣服に残っている。

「おや、いい匂いだ。衣服はすっかり草臥れているのにね」


「もうしばらくお待ち願えませんでしょうか。まだ尼君を恋しがられて、お食事も召し上がりません」

たしかに姫君はひどく面やつれしているが、それでいっそう上品で可愛らしく見える。

はどうして、そんなに尼君を恋しがるのですか。亡くなられた方のことを考えても仕方がない。私がいるので安心なさい」

日が暮れかかって兵部卿宮が帰ろうとすると、姫君はやはり心細いのか、の袖に取りすがって声を立てて泣きだした。

ももらい泣きして、

「泣かなくてもいい。今日か明日のうちに迎えにこよう」

頭を撫でながら繰り返しなだめすかして、帰っていった。


姫君尼君が亡くなってからというもの、人がいないところでは泣いてばかりいる。

将来のじぶんの身の上のことなど分かるはずもなく、ただ長いあいだ離れることなく一緒に暮らしてきた尼君がもういないと思うとただただ悲しいのだ。

幼心にも悲しみに胸がふさがって、かつてのように女の童(めのわらわ)たちと無邪気に遊ぼうとはしない。

昼間はどうにか気持ちを紛らしているが、夕暮れになるとひどく塞ぎこんでしまう。

乳母たちは、姫君を慰めかねている。

「この様子では、これからどうしてお暮らしになれよう」


源氏の使いでやってきた惟光(これみつ)が、「今日か明日のうちに姫君が兵部卿宮邸に引き取られる」ということを知った。





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若紫 24 源氏、姫君を盗む

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随人  随人 ずいじん/ボディーガード


つまど  妻戸  両開きの板戸


時代祭 時代祭り10月15~23日
1895年(明治28)、平安神宮の創建を祝って始められた。葵祭や祇園祭とともに京都三大祭りの一つだが、歴史は浅い。


源氏の使いでやってきた惟光(これみつ)が、「今日か明日のうちに姫君が兵部卿宮邸に引き取られる」ということを知った。

源氏は左大臣邸で報告を受けた。

葵の上はいつものように奥の部屋に閉じこもったままである。


姫君が兵部卿宮邸に移られてから連れ出せば、いかにも好色めいてみえよう。

姫君が情を通じてのことだろうと思われる年ごろであれば世間にはよくあることだが、一方的に『幼い姫を盗み出した』と世間から非難されるにちがいない。

また、兵部卿宮に知られた場合、にあわせる顔がない。

宮邸に向かわれる前にこちらにお連れする。暗い時分にお迎えに行くので、随身2名と牛車の準備を整えておくように」


惟光が妻戸を叩いて、少納言の乳母を呼んだ。

源氏の君がおいでです」

姫君はお寝みになっておられます。どうしてこんな夜更けに」

乳母は、どこか他の女の所からの朝帰りと思っている。

姫君は兵部卿宮邸へ移られるそうですが、その前にお話ししたいことがあります」

源氏がいうと、乳母

「どのようなお話でございますか。はっきりとお返事ができましょう」

皮肉っぽくいって、微笑んでいる。

源氏がかまわず中へ入っていくと、乳母が困って制止した。

「人目がないので、年配の女房たちがだらしない格好で寝んでおります」


姫君はまだお目覚めではないですか。起こして差し上げましょう。こんなに美しい朝霧を知らないのは惜しいですよ」

そういいながら、源氏姫君の御帳台(みちょうだい)の中に入っていった。





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若紫 25 姫君を二条院へ

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御帳台  御帳台(みちょうだい)

牛車1 牛車


そういいながら、源氏姫君の御帳台(みちょうだい)の中に入っていった。

姫君は寝ているところを源氏に抱き起こされて目を覚ましたが、寝ぼけたまま父宮が迎えに来てくれたものと思っていた。

「さあ行きましょう。のお使いとして参りました」

姫君は、その声が父宮ではないことに気づいて蒼ざめた。

「ああ、情けない。わたしも同じですよ」

源氏姫君を抱きかかえて御帳台から出てきたので、少納言の乳母はおどろいた。

「どうなさるおつもりですか」

「こちらへは度々伺えないことが気がかりで私の邸へお誘いしていたのに、宮邸にお移りになるそうですね。そうなると、ますます連絡がとれなくなります。

とにかく、だれか一人ついて来てください」

こんなに堂々とした人さらいがあろうか。

「今日はまことに都合が悪うございます。兵部卿宮がお越しになられた時、なんと申し開きできましょう。

年月をへて、そうなられるご縁があればどうともなられましょう。

あまりに突然のことで、どうすればいいのか」

「そうか、それでは女房たちはあとから来ればよろしかろう」

姫君は、怖くて泣いている。

もはや源氏を止める術もなく、少納言の乳母は昨夜縫いあげた姫君の衣装をかかえ、自分も身なりを整えて牛車に乗りこんだ。


まだ明るくならないうちに二条院に着くと、西の対に牛車を寄せて、姫君を軽々と抱きあげて下ろした。

西の対はふだん使用していないので、御帳台などはない。

すぐに惟光を呼んで御帳台や屏風、夜具などを用意させた。

「(御帳台ではなく)少納言のところで寝たい」という姫君の声があどけないが、震えている。

「これからは、乳母といっしょに寝てはいけないのですよ」





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アイドルやるのも命がけです。

25日夕方、岩手県滝沢市で行われたAKB48の握手会で、メンバー2人とスタッフの男性の合わせて3人が男に切りつけられて病院に運ばれました。
男は、殺人未遂の疑いで逮捕されました。
切られたのはAKB48のメンバーの川栄李奈さん(19)と入山杏奈さん(18)の2人とスタッフの男性1人で、けがの程度などは分かっていませんが、警察や消防によりますと3人とも意識はあるということです。

    … … … … 中略 … … … …

切りつけられたAKBのメンバーらが搬送された盛岡市の病院の前には、ファンが詰めかけ、心配そうな表情を浮かべていました。 (NHKニュース速報)




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若紫 26 うちとける姫君

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袍袍(ほう)

寝殿造り 寝殿造り


「これからは、乳母といっしょに寝てはいけないのですよ」


空がしらんでゆくにつれて少納言の乳母があたりを見渡すと、みごとな寝殿のたたずまいと調度類はいわずもがな、庭の白砂も宝石を散りばめたように朝日に輝いている。

少納言は、自分には場違いに思えて気後れした。

西の対には、女房は仕えていないようだ

男たちが、御簾(みす)の外に控えているだけである。


日が高くなって、源氏が起きてきた。

女房がいなくて不便でしょうから、日が暮れてからお呼びになればいい」

東の対にいる童女(めのわらわ)を呼ぶと、かわいらしい4人の童女がやってきた。

それから、衣装にくるまって寝ている姫君を起こした。

「いつまでも沈んでいてはいけません。いい加減な人は、こんなに心からお世話をしませんよ。女は心が柔らかく、素直なのが一番です」

姫君は遠くからより近くで見るほうがずっと可愛らしくて綺麗だ。

源氏はやさしく語りかけながら、東の対からもってきた面白い絵やおもちゃなどを見せた。

姫君は、だんだん打ち解けてくる。


源氏が東の対に出かけると、姫君は部屋の端にでて庭の木立や池などを眺めた。

霜枯れの前庭が絵に描いたように美しく、いままで見たこともない黒や緋色の袍(ほう)を着た四位や五位の貴族たちがひっきりなしに出入りしている。

「なんて素敵なところでしょう」

屏風などの珍しい絵を眺めているうちに、姫君はすっかり気が紛れていた。


源氏は2、3日参内せず、姫君の相手をした。

姫君の手本にと、古い和歌や絵をいろいろと書いてみせる。

それらは、すべて見事な出来映えだ。

姫君は、「武蔵野といへばかこたれぬ (武蔵野というと文句をいいたくなる)」と紫の紙に書いてある、墨づかいがとりわけ優れているのを手に取ってながめている。

そばに、すこし小さな字で書き添えてあった。

○ねは見ねど あはれとぞ思う 武蔵野の

    露分けわぶる 草のゆかりを

まだ共寝はしていないが愛しくてならない。武蔵野の露を分け入りかねてなかなか会えない紫草のようなあの方(藤壺)のゆかりのあなた(若紫)よ

「さあ、姫君もお書きなさい」

「まだ上手に書けないわ」

甘えるように源氏を見上げているあどけない姫君の顔の表情が無邪気でかわいらしい。





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(要旨) 直接的な脅威にならない地域でアメリカが軍事行動を起こすときは、同盟国や友好国と集団的な行動をとることが大事だ。 (『集団的自衛権』容認派は泣いて喜びそう)

ベトナムに対する中国の暴虐非道を国連はなぜ黙っているのかと思っていたが、国連ではなく米国が動いてくれた。

国際連合の存在意義は奈辺にありや。
非難も仲裁もしない。

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若紫 27 秘蔵っ娘

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東三条殿
 東三条殿復元模型/典型的な寝殿造


寝殿の正面
 寝殿の正面in風俗博物館 京都市


甘えるように源氏を見上げている姫君のあどけない表情が無邪気で可愛らしい。

源氏はつい微笑んで、

「うまく書けないからといって、書こうとしないのはよくありません。教えましょう」

姫君が恥ずかしそうに少し顔をそむけて書いている様子がたまらなく愛らしい。

「書き損なったわ」と隠そうとするのを見ると、

○かこつべき  ゆゑを知らねば  おぼつかな 

    いかなる草の  ゆかりなるらむ

何を仰っているのか分かりません。私はどんな草のゆかりなのでしょう

稚拙だが将来が楽しみなふくよかな文字で、亡くなった尼君の筆跡に似ている。

「今風の手本を習ったら、もっとうまく書けるだろう」


あちらの屋敷に残っている女房たちは、兵部卿宮姫君の行方を尋ねられるが答えようがなくて困っていた。

源氏に固く口止めされているので、

「行く方を知らせず、少納言がどこかへお連れしました」

は、肩を落として帰っていった。

尼君が、をわたすのを嫌がっておられたので、乳母がどこかへ連れ出したのだろう」


二条院の西の対に、女房たちが次第に集まって来た。

姫君はすっかり源氏になついている。

源氏が留守でさびしい夕暮れなどには、尼君を偲んで涙ぐむことはあるが父宮を思い出すことはない。

当時は通い婚で、父と子がいっしょに暮らす時間が短かったからだろう。

子どもたちは、母方の実家で育った。

もっとも平成の世でも、「母の日」はもてはやされるが、「父の日」はいつのまにか過ぎ去っている。


源氏が外から帰ってくると、姫君はまっさきに出迎えて源氏の胸に飛び込むようになった。

実の娘でも、このくらいの年齢になると父親に対して打ち解けた振る舞いをしたり、いっしょに寝起きしたりすることなどしなくなるだろう。

ちょっと変わった秘蔵っ娘である。





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ご存知ですか。ここにも、中国の影響力(具体的には、富裕層によるCDの大量買い)が及んでいるようです。

2年ほど前から、ポスト前田敦子22は、渡辺麻友20~松井珠理奈17ラインだろうと思っていたのが、その2人を引き離して、まったく異質の、見た目も感性も「アイドル」というより「お笑い芸人」のような指原莉乃21が断トツの一位です。

*ポスト前田敦子とは、「不動のセンター」という意味です。

中国のにわか金満家たちは、俗臭芬芬としたさっしーがお好きらしい。
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末摘花①古典文学No.1の醜女

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末摘花系図
 末摘花(すえつむはな)関連系図


末摘花 末摘花光源氏


ちょっと変わった秘蔵っ娘である姫君(若紫)との楽しい日々から、物語はいきなり日本古典文学における屈指のあるいは一番の醜女(しこめ)である末摘花との恋愛話へきりかわる。

だからといって、源氏若紫との絡みがこれで終わりなのではない。

若紫はのちに源氏最愛の妻、紫の上として準主演クラスの役割を演じつづける。


とにかく絶世の美男子とされる源氏は、天下の美女から醜女No.1までじつに守備範囲が広い。

といっても、当時、男と女が初めて会うのは夜の暗闇。

何度か恋文(和歌)のやりとりをしたあと、男が女に仕えている女房に導かれて女の寝室にはいるのだ。

暗がりのなかで互いの顔や体は見えないままに手さぐりで男女の関係を結ぶのだから、どんな相手なのかは当人たちには分からずじまいである。

それでも、男が3夜つづけて通えば結婚が成立する。

源氏の女の好みが、とりたてて広かったわけではないのかも知れない。

じっさい明るい場所で初めて末摘花を見たとき、失礼なことに心底おどろいている。

ただ、美醜にかかわらず一度でも契った女は、その必要がある場合は終生経済的な面倒をみている。


若紫を二条院に招いたころ、源氏は亡くなった夕顔を忘れられずにいた。

嫉妬に狂った六条御息所(ろくじょうみやすどころ)の生霊(いきりょう 物の怪)に取り殺された、シダレヤナギの細枝のようになよなよとした、あの夕顔である。

もともとはライバルである頭の中将(とうのちゅうじょう)の恋人で、娘(玉鬘 たまかずら)までなしていた。





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末摘花②女に嫌われる女

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紅花
 末摘花=紅花(ベニバナ)の花

雨夜の品定め雨夜の品定め 五月雨の夜、源氏や頭中将たちが女性の品評をする場面【帚木の巻】


もともとはライバルである頭の中将(とうのちゅうじょう)の恋人で、娘(玉鬘 たまかずら)までなしていた。

源氏は交流のある女たちのことを、あれこれ考えている。

正妻の葵の上(あおいのうえ)や六条御息所(ろくじょうみやすどころ)ら、高貴な身分の女は鼻っ柱が強く、知性と教養を、本人たちはそのつもりはないのかも知れないが、いつも鼻にかけているようで気が休まらない。

また、一言なにかいうと二言三言かえってくる。

あこがれの藤壺は手が届かないし、若紫はまだ幼い。

空蝉(うつせみ)は中流の出だが、なかなか情がこわい。

軒端荻(のきばのおぎ)は素直だが、だらしないところがある。

そこへ行くと、夕顔はよかった。

我を通そうとするところがなく、ほどよい気品があって、すべてをこちらに預けてくれた。


あとで分ったことだが、夕顔は、【雨夜の品定め】で、頭の中将が、「中流の女はいい」といっていた、まさにその「中流の女」である。

ということは、夕顔は、当代最高のふたりの貴公子を虜(とりこ)にしたということだ。

ある女流作家が、雑誌の対談のなかで語っていた。

夕顔はおとなしいが、よほど性技に長けていたのでしょう」

性技の巧拙はともかく、はかなげな夕顔は恋愛に対しては意外と積極的である。

頭の中将と好い仲だったころ、頭の中将の正妻・四の君(右大臣の娘)の知るところとなり、ひどく脅された。

そして、みやこの巷に隠れ住んでいたとき、たまたま見かけた源氏に誘うような和歌を送っている。

女のほうから先に、というのは当時の社会常識的にはなかったことだ。

男に取り入るのが際立ってうまい反面、同性から蛇蝎のごとく嫌われる女。

そういうタイプの女が紫式部の周辺にいて、苦々しく思っていたのかも知れない。





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②政府組織で働く [JICA・JETROなど]: 国際協力のお仕事 (世界で活躍する日本人)/学研教育出版


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渡辺麻友でよかった!!王道のポスト前田敦子麻友しかいないと思っていたので無性にうれしい。それに一曲だけとはいえ、国民的アイドルグループなら真ん中にがさつな子がいてはいけない。
前田先輩のスピーチを研究しよう。事実と感想を平板に述べているだけで、何も心に響いてこない。先輩はおしゃべりは苦手のようだけど、スピーチは一級品ですよ。
王道三代目は、松井珠理奈ペタしてね

末摘花③気兼ねのいらない女

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紫式部  紫式部 土佐光起画 石山寺蔵


六条御息所の生霊
 六条御息所(ろくじょうみやすどころ)の生霊


そういうタイプの女が紫式部の周辺にいて、苦々しく思っていたのかも知れない。


ここで、「女に嫌われる女」夕顔の凄惨な運命をざっとおさらいしておきたい。

一般論ではなく、『源氏物語』に即して具体的に書こうとすると「嫌われる」という語句は軽すぎる。


夕顔頭の中将(左大臣の息子)と深い仲になって娘をもうけていることを頭の中将の正妻・四の君が知るところとなった。

ときの権力者・右大臣の娘である四の君は、見るからに怖しそうな男たちに命じて夕顔を脅しにかかる。

夕顔は屋敷を逃げ出して、市井の人々の住む都の一角でひっそりと暮らすようになった。

そんなとき、源氏が重い病に伏せている乳母を見舞うために近くへやってくる。

夕顔は覆面をしている貴公子が源氏であろうと見当をつけて、和歌を書き送った。

○心あてに  それかとぞ見る  白露の

    光そへたる  夕がほの花

あて推量ですが、「源氏の君かしら?」と思っております。あなた様の白露のような麗しさで、夕顔の花が一段と美しく見えます

身分制社会おいて、中流階級の夕顔が最上流の源氏になれなれしい和歌をわたせるのだろうかとの疑問があるが、夕顔にはあらゆる事象を男と女の関係に還元する特殊能力があったと思えば納得できる。

学生時代の同級生に、いつも「わたしは女、あなたは男」という感じで接してくる女子がいた。

ほかの女子にはない独特のコミュニケーション能力に何人かの男子がやられたものだ。


和歌をきっかけとして、源氏夕顔は懇ろになる。

そのころ、源氏六条御息所のもとへ通っていた。

亡くなった前東宮(皇太子)の未亡人だが、飽きてきていた。

源氏の足が遠のいた理由が夕顔の存在にあることを知った御息所は、生霊となって、源氏と同衾している夕顔に襲いかかって取り殺した。

源氏の君は、こんな卑しい女と」

つまり、夕顔頭の中将正妻に脅されて屋敷を追われたあと、源氏愛人に殺された。

これは、「女に嫌われる女」というレベルの話ではない。


ある日、源氏夕顔のやわらかな人柄を懐かしんでいた。

「どこかに気立てがよく、気兼ねのいらない女はいないものか」





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 渡辺美優紀は干された?


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末摘花④十六夜の朧月夜

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和琴
 和琴(わごん)を弾く紫の上 風俗博物館

白楽天白楽天/白居易
唐の詩人 (772~846)  『源氏物語』は、白居易の「長恨歌 ちょうごんか」に影響を受けている。


「気立てがよく、気兼ねのいらない女はいないものか」

おもわず声に出たらしく、それをたまたま大輔の命婦(たいふのみょうぶ)という色好みの若い女房が聞きつけた。

命婦の父は皇族の血を引く兵部の大輔(ひょうぶのたいふ)で、母は源氏の乳母(めのと)の左衛門の乳母

内裏(だいり)に、女房として仕えている。

母は父と別れ、筑前守と再婚して任地(福岡県)へ赴いた。

命婦は、父が住んでいた常陸宮邸(ひたちのみやてい)を里方(さとがた)にして内裏へ通っている。


常陸宮邸に、亡き常陸宮の晩年に生まれて格別にたいせつに育てられた姫君(末摘花 すえつむはな)がいる。

命婦は、その末摘花が生活に困窮して日々心ぼそく暮らしていることを源氏に話した。

源氏は気の毒に思って、命婦にたずねる。

「どんな姫君なのか」

「性格や容姿など、くわしくは存じません。おとなしくて控え目なので、用向きのときだけ物を隔てて話しております。琴(きん)が、話し相手のようです」

白楽天は琴と酒と詩を三友(さんゆう)といったが、酒は女には向かないね」

「酒は女には向かない」と思いこんでいる源氏は、千年後の「酒と女」事情を知る由もない。

姫君の琴の音をぜひ聴いてみたい。常陸宮は、その方面に造詣が深かった。姫君も相当なものだろう」

「いいえ、源氏の君がわざわざ足をお運びになるほどではありません」

「つぎの朧月夜(おぼろづきよ)にでかける。そなたも内裏から下がっておくように」

命婦は面倒なことになったと思ったが、命令には逆らえない。


父の兵部の大輔新しい妻のところに住みついていて、時々常陸宮邸にやって来た。

命婦継母のところには住みづらく、ひとり常陸宮邸に身を寄せている。


源氏は言葉どおり、十六夜(いざよい)の月の美しい時分に姿をみせた。





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末摘花⑤琴の音色

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きん
 琴(きん)を弾く女三の宮。源氏の二番目の正妻。
 紫の上は源氏「最愛の妻」であることに変わりないが--。

寝殿造・格子寝殿造の格子 風俗博物館


源氏は言葉どおり、十六夜(いざよい)の月の美しい時分に姿をみせた。

「今夜は月明かりですが、すこし霞んでおります。琴(きん)の音(ね)は冴え渡らないのではないでしょうか」

大輔の命婦(たいふのみょうぶ)が困ったように源氏にいうと、

「一曲でいい、琴を弾いて下さるよう姫君にお願いしておくれ」


命婦は自分の部屋に源氏を待たせて、末摘花(すえつむはな)のいる寝殿にむかった。

寝殿はまだ格子を上げたままで、末摘花は梅の香がほのかにただよう庭を眺めている。

命婦は、さきほど源氏にいったことと反対のことを口にした。

「琴の音色が、美しく冴えわたるような夜でございます。いつもは気ぜわしくお伺いしてばかりで、ゆっくり姫君の琴の音をお聴かせ頂いたことがございません」

「琴の音色を分ってくださる人がいたのですね。でも、あなたのように宮中にお出入りしている耳の肥えた方にお聞かせする自信はありません」

そう言いながら、琴を手元に引き寄せた。

子供のように素直な末摘花だが、それだけに返って、姫君の琴の音色を源氏がどう聞くか他人事ながら心配になった。


末摘花がかすかに掻き鳴らしはじめた琴の音色は、源氏にはさほど上手ではないが古風で床しく聞こえる。

命婦はすばらしく機転の利く女で、末摘花の琴の音をあまり長くは源氏に聞かせないほうがいいと思い至った。

「わたしの部屋に客が来ることになっております。いつまでもこちらにおりますと、その人を嫌っているように受け取られかねません。また、お聞かせください。御格子を下ろしておきます」

命婦が自分の部屋に戻ってくると、源氏

「中途半端な所で、弾くのをやめられたね。上手かどうか聞き分ける間がなかった」

源氏はどうやら末摘花の琴の音に関心をもったようだ。

「今度は、もっと近い所で立ち聞きさせておくれ」





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末摘花⑥乳兄弟

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寝殿造り  寝殿造り

透垣  透垣の一形態


「今度は、もっと近い所で立ち聞きさせておくれ」


ほかに約束している所があるのだろうか、源氏は忍び足で帰ろうとしている。

命婦が、からかった。

桐壺帝が事あるごとに、『は、生真面目すぎて心配だ』とおっしゃっているのが本当におかしゅうございます。このような忍び歩きのお姿をぜひ一度、に御覧にいれたいものです」

源氏は引き返して来て、にやりとした。

「そなたには言われたくない。これを好色な振る舞いとしたら、どこかの色好み女の多情ぶりを何といおうか。宮中で、もちきりだぞ」

正面切って好色女呼ばわりされるのはさすがに恥ずかしいが、まんざら身に覚えのないことではないので、命婦はひとことも言い返せない。


源氏命婦は、乳兄弟である。

男同士の乳兄弟は主君と第一の家臣になるが、男女の乳兄弟はなんでも遠慮なく言い合える仲になったのだろうか。

それとも、源氏命婦は一風変わった乳兄弟なのか。

いずれにしろ、乳兄弟は、実の兄弟姉妹よりも絆が深いとされていた。


ちなみに日本史上に名高い乳兄弟には、平知盛(とももり)と平家長(いえなが)がいる。

ふたりは、『平家物語』屈指の名場面である壇ノ浦の戦いにおいて、「見るべきほどの事をば見つ。いまはただ自害せん」とつぶやいて、死ぬ時はともに同じ場所でというかねてからの約束どおり、同時に壇ノ浦の激流に身をひるがえした。

事実上、平家滅亡の象徴である。


帰りぎわ、源氏末摘花を垣間見ようと寝殿そばの透垣(すいがい)に立ち寄ると、ひとりの男が物蔭にたたずんでいた。

「あそこに誰かいる。あの好き者はだれだろうか」





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末摘花⑦光源氏と頭中将

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石山寺の源氏間で執筆する紫式部 
 『執筆する紫式部』歌川豊国筆 石山寺「源氏の間」

末摘花1
 頭の中将、光源氏を呼び止める

「あそこに誰かいる。あの好き者はだれだろうか」

源氏はその男に気づかれないように、抜き足差し足で立ち去ろうとした。

女の邸(やしき)から出てきた男が、女の邸を垣間見ている男に声をかけるのはいかにも間が抜けている。

しかし妙なことに、邸を垣間見ていたほうの男が邸から出てきた男に近寄って来た。

頭の中将である。

頭の中将は、源氏が宮中を退出してから左大臣邸に寄ることもなく二条院にも帰らず、あらぬ方角に向かったので、「どこへ行くのだろう」と好奇心にかられたのだった。

自分にも約束している女がいたが、源氏の後を付けたのだ。

源氏が常陸宮邸の大輔の命婦(たいふのみょうぶ)の部屋に入ったので不審に思っていると、琴(きん)の音がかすかに聞こえてくる。

しばらく耳をすまして聞いていると、源氏が邸から出てきた。

そして、忍び足で立ち去ろうとしている。


当時の教養人たちは、なにかにつけて和歌を詠んだ。

『源氏物語』の登場人物たちも、むろん例外ではない。

作者は、たいへんだ。

紫式部はさまざまな状況下、各人各様の個性と立場で当意即妙の和歌を詠んでいる。

散文も韻文もお手のもののようだが、物語‎作者(小説家)としては世界に令名を馳せているものの歌人としてはあまり評価されていない。

頭の中将が恨みがましく、

○もろともに  大内山は  出で連れど

    入る方見せぬ  十六夜の月

いっしょに宮中(大内山)を退出したのに行く先を晦ますあなたは十六夜の月のような方だ

源氏は女の邸を垣間見ていた男が頭の中将と分かると、少しおかしかった。

○里わかぬ  かげをば見れど  ゆく月の

    いるさの山を  誰れかたずぬる

どこの里にも遍く照らす月を眺めはしても、その月が隠れる山までだれが訪ねよう

ふたりとも約束している女がいたが、からかいあっているうちに別れがたくなった。




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末摘花⑧中務の君の恋

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直衣
 直衣 (のうし)  直(ただ)の衣=平常服 色目や紋様は自由

与謝野晶子

「あゝ弟よ、君を泣く。君死にたまふことなかれ。 ~ 」
与謝野晶子集団的自衛権をどう思うだろうか。 (下へ)


ふたりとも約束していた女がいるが、からかいあっているうちに別れがたくなった。

牛車に相乗りして、雲のなかに月が趣深く隠れている夜道を横笛を合奏しながら左大臣邸にむかう。

先払いの声を従者にかけさせずにこっそり邸内にはいり、人目につかない渡り廊下に直衣を持ってこさせて着替えた。

それから何食わぬ顔でたったいま帰って来たようなふりをして笛を吹いていると、左大臣が高麗笛をもってやって来た。

左大臣は大変な笛上手で、みごとに吹き鳴らす。


三人が笛に興じているそばに、中務の君(なかつかさのきみ)という女房がもの思わしげに控えている。

中務の君はひそかに源氏と関係をもっているが、別れられずにずっと思い悩んでいる。

なにしろ源氏の正妻・葵の上は、ここ左大臣家の娘なのだ。

それゆえ、源氏がときどき通ってくる。

しかも、源氏葵の上は新婚当初からうまくいっていない。

左大臣の北の方・大宮(おおみや)は、源氏中務の君の仲にうすうす気がついているようなのだ。

時として、辛くあたったり不快感をぶつけてきたりする。

中務の君源氏と会えないほど遠く離れた土地へ行こうとも思うが、やはり心細くて決心がつかない。


源氏頭の中将はさきほど聞いた末摘花(すえつむはな)の琴(きん)の音を思い出して、見すぼらしかった邸の様子も一風変わった興趣にあふれていたと思い続けている。

頭の中将は想像していた。

「もし美しくて可憐な女があんな荒れ果てた邸で長い年月をわびしく暮らしていたら、たまらなくいじらしくなって、世間の噂になるほど恋に取り乱すだろう」




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よく言われることだが、安倍晋三氏をはじめ戦争体験のない面々がほぼ安倍独裁という形で今の日本政治を牛耳っている。とかく国家主義的で、発言がむだに勇ましい。

「ニッポンは、強いんだぞ!!」

体育会系の薄暗い部室で、ほんの数名の右に偏った顔ぶれによって国の根幹が決められているイメージがある。

とにかく、『集団的自衛権』という名のもとに戦地に行かされて命を落とすのはまず若い自衛隊員であり、将来的には一般の若者が駆り出される可能性だってある。

政府に物申せば、『特定秘密保護法』によって刑務所へ連行される。(今は、そんなことはないというが)

こうして安倍さん悲願の、戦前に回帰したかのような『美しい国 日本』が実現する。

「~親は刃(やいば)をにぎらせて 人を殺せとをしへしや~」




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末摘花⑨梨の礫

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末摘花系図 末摘花関連系図

頭中将2 頭中将
 源氏物語屏風in宇治市*源氏物語ミュージアム


源氏頭中将は競って末摘花(すえつむはな)に懸想文を書いては、返事があったかどうかを互いに探りあった。

しかし、何度おくってもどちらへも反応がない。

頭中将は、いい加減いらいらしてきた。

「あまりにも味気ないではないか。
わびしい生活をしている人はもののあはれを解し、草木や空の景色をみては和歌に詠んで送ってくれれば、ゆかしい心ばえが偲ばれる。そういう女に、男は心惹かれるものだ。
重々しい身分とはいえ、こうまで引っ込み思案なのはいただけない。こちらの体裁もわるい」

源氏にたずねた。

「あちらからのお返事は御覧になりましたか。わたしも試しにちょっと手紙を出してみたのですが、みごとに梨の礫です」

源氏は、わざとあいまいに答えた。

「さあ、あまり意識していないけど見た記憶はないような…」

頭中将は、「もしかしたら、自分だけ無視されているのか」と悔しくてならない。


源氏末摘花にそれほど執着していないうえに、これほどつれなくされたことに興醒めていたが、頭中将がしきりに言い寄っているのを知って、乳母子の命婦に相談した。

頭中将が、恋の駆け引きに勝ったと思ったら癪だからである。

姫君が返事をくださらないので、無視されているようで情けない。浮気者とお疑いなのだろう。すぐに心変わりする男ではないのに。これまでは相手の女が気持ちにゆったりしたところがなく短気だったので、心外な結果になったのだ。それなのに、いつもわたしの浮気のせいにさせられた」

姫君は、とても恥ずかしがり屋です。珍しいくらいの人見知りです」

「利口ぶったり才気走ったりしたところはないんだね。女はあどけなくて控えめで、おっとりしているのがかわいい」

そういいながら、源氏は、あどけなくて控えめでおっとりしていた夕顔を思い出していた。


瘧(わらわ)病みを患ったり禁断の恋愛事件を起こしたりして、心にゆとりのないまま春がすぎ夏が過ぎた。





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末摘花⑩命婦の悩み

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小野小町
 小野小町と六歌仙 歌川豊国画


簀子 簀子(すのこ 縁側)


瘧(わらわ)病みを患ったり禁断の恋愛事件を起こしたりして、心にゆとりのないまま春がすぎ夏が過ぎた。

秋になって、静かにもの思いにふけっていると、あの夕顔の宿の砧(きぬた)の音やうるさくて耳障りだった碓(からうす)の音が恋しく思い出される。

常陸宮邸にはたびたび手紙をもたせるが、あいかわらず返事がない。

あまりに人の情けを解しない態度が気にさわるが、このまま引き下がってなるものかと、意地になって、大輔の命婦(たいふのみょうぶ)をせめた。

命婦こそ、とんだとばっちりだ。

「どういうことなんだ。こんな無礼な目にあったことは、今まで一度もない」

「不釣り合いなご縁などと姫君に申し上げたことは一度もございません。内気な性格がすぎて、お返事をお出しになれないのでしょう」

「それが世間知らずというもの。親がかりで自分の身が思うにまかせない年頃なら分かるが、もう分別のつくだろうと思うからお手紙を差し上げるのだ。
色めいたことをしたいわけではなく、あの荒れた簀子に佇んでみたいだけなのだ。姫君のお許しがなくても、うまく取り計らって手引きしておくれ。見苦しい振る舞いはしない」


源氏は世間の女のうわさを聞き集めて、その中から、「これは」という女を覚えておく習慣が身についている。

命婦が教えた末摘花は、その一人である。

夕顔を亡くして悲しみに暮れている源氏に、夕顔とタイプが似ているということで話したのだ。


だが、命婦は少々煩わしくなっている。

源氏を手引きするのも気が重い。

実際の末摘花の、女としての魅力はどうか。

当代一位と二位の貴公子、源氏頭の中将を夢中にさせるほどの魅力があるか。

女らしさには欠け、おとなしくて控えめだが奥床しさはあまり感じられない。

そして、何より、あの容姿。

源氏を手引きすれば、末摘花は困るかもしれない。

絶世の美女だったといわれる先輩の小野小町に対して、こちらは目を覆うばかりの人間離れした醜女(しこめ)なのだ。


紫式部は、美人の容貌は興味なさそうにさらっと書き流すが、ブサイクの場合はなかなかどうして辛辣である。





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